ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

国立国際美術館の展示

昨日は、会社の創立記念日で主人の仕事がお休みだったので(確かこの日のマレーシアは「KLの日」だったと思います)、二人で大阪の中之島にある国立国際美術館へ「30年分のコレクション」と題する展示会に行ってきました。朝日友の会の会員である私は無料で、主人は団体料金で入館できます。昨年度は会員の特典をほとんど利用できなかったこともあり、せっかくなので行ってみたわけです。
・・・と、もったいぶって書いているのは、それほどの感動も興奮もなかったどころか、むしろ疲れて帰ってきたからでした。
確かに、中にはよい作品もありました。特に、最初のセザンヌピカソ佐伯祐三などは、落ち着いて見られました。ところが、先へ進むにつれて、感覚としてはわからなくもないものの、(なんじゃこれは)というような書きなぐりのようなものもあり、どこが芸術的センスなのか理解しがたいものもたくさん展示されていました。正直なところ、モダン・アートってよくわからないです。何かを訴えたいんだな、とまではわかるのですが、(だから何なの?)とでも言うのか、「同じ作品を10出してみて」と注文したらもうできなさそうな、と言ってはあまりにも失礼でしょうか。
近くにモード学園があり、そこの学生らしき若い女性達が、一生懸命メモをとりながら鑑賞していました。今回の私は、完全にパスです。(あれ?どこに行っちゃったのかな)と主人を探していたら、早々と出口近くのロビーのイスに腰掛けて休んでいました。「つまらんかった」と一言。
こういうはっきりした主人の態度は、私も少々見習うべきなのかもしれません。子ども時代の学校と家庭での管理干渉教育の影響が今も効いているためか、どうも私は、(ふうん、どこがいいんだろうか)と思いながらも、まじめに説明書きを読んでじぃっと全部を見ようとしてしまいます。そして疲れきってしまうのです。
主人に言わせれば、「あれ、コレクションをただ並べているだけで、テーマがはっきりしていない。もしかしたら、成金が“芸術”の名の下に、よくわかりもしないで買い集めただけのものも多いのかもしれないよ」「あの作品集からどれだけ50年後も残るか、だな」「芸術は、見る人にきちんとメッセージが届いて、見てよかったな、と思えるものじゃないと。ただの自己表現じゃダメなんだよ」とのこと。ふうん、なるほど。そう言えば、主人は学校時代に、大きな大会で絵の賞状をいただいたのでした。以前、アルバムの写真で見たことがあります。
どうも私は、芸術家は一般人よりも感覚が鋭くて、前衛的で進歩的だという思い込みがあるためか、(わからないのは私のせいだ)と思ってしまうところがあります。また、時代によって評価がガラリと変わった芸術家も多いことから、(今の自分の判断だけじゃわからない)と控え目になってしまうのかもしれません。
ただし、1999年8月にマドリードで見たプラド美術館の絵画や、2005年8月にアメリカで見たボストン美術館の展示などは、さすがはと圧倒されるような作品が多かったです。わざわざ現物を見に、ここまで来てよかったと心から思えました。トレドでのエル・グレコ作品もよかったです。本物が見られたのは、まさに僥倖です。
学生時代から、新聞の告知などで、(これは)と思う展示会を、博物館や美術館に出かけて見るように努めてきましたが、この頃、ようやく自分なりの価値判断基準ができかけてきたように思います。やはり、あてがいぶちはダメで、他者が下した基準に盲目に従順になるのも考えものです。もっとも、専門家の鑑識眼は尊重されるべきですが、その専門家にしても、良し悪しがあります。ですから、わからないものは判断保留してでも、自分の中で立場をはっきりさせるべきだろうと思いました。
そうはいっても、できる限りよいものに触れるべきです。それも、小さい頃から。プラド美術館のレストランでパエリャを食べていたら、近くのテーブルに座った親子連れが目に留まりました。お母さん(もしかしたら、親戚のおばさん?)が、10歳ぐらいの子ども達三人に、夢中になって、絵画とその時代背景、または画家とその歴史などを、一生懸命説明しているのです。子ども達の方も、時々質問を投げかけながら、熱心に聞いていました。こういう教育は、とてもよいものだと感じました。
マドリードでもトレドでも、もちろんスペイン語で通したのですが、やはり何でも勉強しておくに限ると思いました。スペインは、それまで訪れたイギリス、オランダ、ドイツと異なり、人々が陽気で気さくでしたけれども、カトリック国のためか、どこかのんびりとして悠長なのです。タクシーに乗って「プラド美術館まで、お願いします」と運転手の若い兄ちゃんにスペイン語で言うと、「ムイ・ビエーン!」と喜んで、どこか危なっかしげな運転を始めました。途中ですれ違った車にかわいい小さい男の子が乗っていると、なんと窓を開けて手を振り出すのです。(おいおい、ちゃんと前見て運転してよね)という感じでした。小学校2年の頃、本でスペイン画家ムリリオの話を読んだことがあります。つい当時を思い出してしまったほど、スペインはスペイン、マドリードマドリードでした。
・・・と書けるほどのものが、昨日の展示会では感じられなかったのが、非常に残念です。

休日としては、その他にも、お食事したり、本屋さんで30分ほどぶらぶらして新しい辞書を見つけたりしたので、まあよしとしましょうか。