ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

読書の勧めと言葉の大切さ

昨日の続きです。『本を読もうー言葉が伝える豊かな心』から、おもしろいと思った箇所をご紹介いたします。なぜ、この冊子から引用することが緊急重要だと考えたかと言えば、ここに書かれている内容は常々私も感じていた由々しき話だからです。

ちなみに、キリスト教出版界はバブル絶頂期の1991年がピークで、大きな事典など高額商品が出版され、25億円を超える売り上げがあったそうです。その後下降し、2006年度の売り上げは17億円以下だとのことです。また、40年前に活躍していたキリスト教出版社が事業を中断してしまったようです。例えば、日本YMCA同盟、聖文舎(ルーテル系)、ヨルダン社(バプテスト系)などがそれに該当します(p. 2)。

しかしそれは、日本の出版界そのものの低迷とも一致し、1996年を売り上げのピークとして、この10年間で、19%、5000億円落ちたと書かれています(p. 2)。

次の作業をした後に、一つのメモが出来上がりました。

印象づけられた箇所にラインマーカーを引きながら最後まで読み通す→マーカー色のついた文をワードにそのまま入力していく→入力したものを数日寝かせる→意味のまとまりごとに文を並べ替える

従って、引用は順不同で、ページ数も省略しています。ご了承ください。

(1)加藤常昭先生について
・本を読むこと、作文を書くこと、音楽が好き。いい教師に恵まれた。
・「…東京はほとんど毎日空襲の恐怖のなかにありましたから、結局自分の生き死にというのをいつも考えていたわけですね。若いうちに死ぬに違いないと。するとやはり「生きるとはどういうことか、死ぬとはどういうことか」ということと読書が深い関わりを持ちつづけたし、音楽の場合にも、たとえば日比谷公会堂でコンサートがあるとすると、いつ空襲警報が鳴るか分からない。今で言うとヘルメットですが、昔ですと鉄兜を背負って都心に出るのです。」「自分の生き死にが懸かっているという意味で、言葉と音楽に触れつづけたというのはとても大きかったかなという思いがします。」
・東大の哲学科は、徹底して本の読み方を教えたもの

(2) 児童向けの本について
・絵雑誌『コドモノクニ』東京社・婦人画報社(1922年〜)大阪国際児童文学館が全巻所蔵←日本語独特のしらべ・言葉に力がある
・観察絵本『キンダーブック』フレーベル館(1927年〜)←耳も目も子どもはとても鋭い感覚を持っている。十万冊売れた。『チャイルドブック』『よいこのくに』『ひかりのくに
講談社『幼年倶楽部』『少年倶楽部』『少女倶楽部』と絵本『乃木大将』『東郷元帥』『楠正成』←お祝いのために作る。商売うまい。
・『日本少国民文庫』のアシスタントが石井桃子先生←必ずしも国家主義的な教育を受けたわけではない。ひじょうにヒューマニスティック。ひじょうに豊かな体験、見方、感じ方がある。

(3)興味深いエピソード
・東大総長・文部大臣の有馬朗人先生:「僕が科学者になったのは『人間はどれだけのことをしてきたか』という本を読んだからなんですよ」
・「大草原の小さな家」という物語は、アメリカの19世紀の「農地法」の影響で、「自分の土地に住まなければ権利は発生しない」という規定から生まれたもの
C.S.ルイスは子どもの時にいろいろな体験をした人

(4)子ども時代の過ごし方
・子どもの時に本物に触れたということが大きい。子どものうちに、テレビではダメで、直接に絵を見るということが大事

(5)本の販売と購買
・商売は、正直、勤勉、倹約。近江商人三方よし「買い手よし、売り手よし、世間よし」
・福音館のものだといえば、あまり中身を検討しなくても信用して買い与えるようになっている。中身の質が高いから。

(6)言葉の問題について
・いろいろな意味で言葉の「衰退」が問題になっている
・日常の日本語が今ものすごく貧しくなってしまっている。
・小さい時から、どういう言葉を聞いて、体験してきたかという、その人の「言葉の積み重ね」による。
・言葉というものには含みがあるということはとても大事
・読解力。「含み」が読み取れるかどうか。
・テレビの言葉を生活のなかにどう位置づけるかという知恵はないといけない。テレビとはやはり闘わなければいけない。
・分かる言葉ばかり聞かされているから、分からない言葉にぶつかって立ち往生する経験、「どうしようか」と思う経験をあまりしない。どうも周りのものが「分かりやすい言葉」を羅列していって、テレビなどもぱっと聞いてぱっと分かるという言葉だけで勝負していくと、ものを考えなくなるのではないか。考えなければいけない難しい本というのは、売れないだろうな。そういうところに一つの問題点があると思う。
・言葉が立ち上がって生きて動いているという感じ
・高齢者は、経験があるから言葉が生きてくる、力がある。

(7)人間性
・「共にいる」ということが大切。その言葉の世界、空間、時間を共有。
・人間にとって「手を使って何かをする」ことはものすごく大切なこと。文字を書くということが教育の中でももっと大切にされなければいけない。
・好奇心があると疲れていても何でも、読みたいものは読み、書きたいことは書く。とても幸せなことは牧師の生活自体も好奇心で生きてくることができたということ。自分の一番大事なことはこれ、と思いながらやる仕事は、つまらないことがない。
・「自分探しの旅」とか「自己実現」とか何とか言っているけれども、ちっとも自己実現にも何にもなっていないのは、「自己」が分からないから。自分で自分を殺しているだけのことだ。
(以上)