交渉力と経済力
最近のメーリングリストから、以下に。
田中均『プロフェッショナルの交渉力』
・外務省での在職は、36年間に及んだ。その間、実に数多くの外交交渉に身を置くことになった。
・私が交渉の基本的要素と考えるのは、以下の9つのキーワードだ。「確信」「インテリジェンス」「信頼性」「リスク」「力」「戦術」「保秘」「発表」「人間関係」
・「確信」
交渉を始める前に、達成するべき使命について確信を持とう。交渉目的について自分自身に「確信」がなければ、相手を説得することはできない。
・確信を持っていなければ、駆け引きに巻き込まれる。これはどの交渉でもそうだが、まずどういう絵が描けるのか、結果の道筋を事前に描く必要がある。そのために有効なのが、非公式な協議である。
・事前の綿密な情報収集で発言も評価できるようになる。
・自ら解決したいことの前に、相手がしてほしいことを考える。
・「信頼性」
自己と相手の信頼性を不断を確認しよう。交渉相手の「信頼性」とは、人間として信頼できるかどうかではなく、難しい課題実現ができる力があるのか、とりわけ相手国や企業の首脳部を説得することができるのか、という意味の信頼性である。
・課題を与えて、交渉に足る相手かどうか見極める。
・修羅場の経験が、リスクに立ち向かう勇気をもたらした。
・外交交渉において一つの交渉だけで目標達成に至れるものではない。そこで最終的な目標に向け、できるだけ直線的に伸びた目標を意識する。それが戦略である。最終的な目標とは、大きなコンセプトである。例えば、平和を作ること。こうした目標への到達は時間をかけて築き上げていくべきもの。
・私は英国で研修をしたが、英国は相当に割り切った考え方をする。常に、大きな土俵を描く。壮大な歴史観があり、論理が上手く、演技もうまい。私は英国に多くを学んだ。
・「保秘」
情報を管理できなければ交渉はうまくいかない。
・外交は口で主張するだけの世界だ、などと短絡的な見方をされることもある。だが本当の世界はもっと厳しく、複雑で修羅場だらけで、全知能を傾けて相手の言うことを必死に聞き、難しいコンセプトを作り上げ、それを実施していかねばいけない世界である。感情を排し、物事を実現するドライな世界である。
・「人間関係」
交渉は人間同士の全人格をかけた闘争。相手を大事にしよう。
・重要なのは、経験を大切にすることだと思う。交渉によって生きてくるのは、知識よりも経験のほうが実は多いのである。いかに知識を持っていたとしても、それを有機的につなぎ、相手を説得する言葉にすることは、経験がなければできない。一方で、場数を踏んでいればいるほど、それが短時間でできるようになる。
・交渉とは、知識、経験、人格など、人のすべてを傾ける闘争なのである。私は交渉の際、いつもさまざまなシュミレーションをしていた。だから、ほとんど相手が次に何を言ってくるかが予想できた。そのための訓練を常にしていた。大きな絵を描くために、あらゆる情報を相互に連関させることに取り組んでいた。そして自分の経験をすべて次につなげようと考えた。
・組織では、人が嫌がる仕事をしている人間には文句は出ない。
・外交は、国を繁栄させるためのツールである。
(抜粋引用終)
南康文『華僑商法の秘密』
・世界三大商法のひとつ「華僑商法」の凄いパワー。華僑商法は2000年以上という古い歴史を持つ「ユダヤ商法」や「インド商法」と並んで、世界三大商法のひとつに数えられているほどである。
・一国の政治経済の中枢を握るまでの勢力を持つ、この「華僑コングリマリット」の中を流れる情報量は、日本の総合商社のネットワーク以上のもの凄さだろうし、またその行使する経済力も想像を絶するものがある。
・無一物から身を起こす「白手起家」という考え方は、華僑商法の基本であり、真骨頂である。「マッチ棒一本でもあれば、それで商売ができる。成功へつながる道がある」とよく華僑は口にする。
・新宿や銀座の夜の世界を握る帝王と言われる華僑も、また世界経済を陰で支配しているといわれるユダヤ人も、一見何の努力もしないで、濡れ手にあわの如く巨富を築いてきた好運者だと思われがちだが、そうではない。自分の体力や知力の限りを尽くして、たゆまぬ努力の末に、はじめて巨富をつかむきっかけを得ている。華僑やユダヤ人の成功は、自分の頭や手足でつかみとったものであったのだ。
・「ユダヤ人は頭で稼ぎ、華僑は足で稼ぐ」という言葉がある。ユダヤ人はもともと金やダイヤモンドなどの貴金属と、羊毛、食料といったものを売買する商業民族であった。
・彼らのグローバルな情報収集力と判断力、スピード、金銭感覚、大胆に見えるリスクのとり方、そして中国国内におけるビジネスの方法などを紹介したい。
・自分の分野で一流になれば、その分野において自然にいい情報が入ってくる。
・香港に限らず、ニューヨークやロンドンも情報の宝庫である。富豪たちが集まれば、さまざまな事業話、投資話が自然に集まってくる。
・華僑のグローバル・ネットワークの強みは、日常生活のなかで世界の情報が入ってくることだ。
・情報はただと思っている人がいるが、決してそうではない。インターネットの普及で情報の価値は下がったが、信用できる情報の価値はむしろ上がった。華僑はとくに情報には敏感だ。
・グローバルネットワークにより、親戚を通じてもたらされる世界の最新情報が、毎日、香港や北京の家族の食卓で話されている。オセアニア、アフリカ、アフリカ、ロシアで起きていることが、華僑ネットワークを通じて自然に耳に入ってくる。しかも、それは新聞に掲載されている情報ではなく、生の経済情報なのだ。
・たしかに、華僑はおしゃべりが好きだ。彼らの情報ネットワークの凄さには舌を巻く。カザフスタンの資源の話から、マダカスカルの金鉱の話にいたるまで、世界の情報が香港に集まってくる。
・中国ビジネスでもっとも重要なのは、人間関係だ。欧米でビジネスを行う場合、大切なのは、まず法律、次がロジック、その次が人間関係。
・香港の有名な風水師に会ったことがある。その風水師は、孔子、老子、朱子学、仏教、ヒンズー教、天文学など、宗教、哲学、東洋医学のあらゆる書物を読み、香港の著名な大富豪を顧客に抱えていた。
・その彼に、人間が成功するための条件について聞くと、こう言っていた。「一命、二運、三風水、四積陰徳、五唸書。つまり、人生で成功する秘訣は、先天性の要因と、後天性の運、風水、慈善、知識である」
(抜粋引用終)