ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

夢は枯野を駆け巡る

「旅に病んで 夢は枯野を駆け巡る」
芭蕉は、伝聞では我が町の古い街道を通って詠んだ句があるとのことなので、この町に住むようになった二十年前から、身近に感じていた。このように、形式的な住所だけで町の良し悪しは言えない。私が気に入っているのは、古典文学や日本中世史とも深くご縁のある地域だということだった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070902)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140621)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161121)。つまり、日々の暮らしの中で、無意識的に日本人としてのアイデンティティの深化が繰り返されているということである。
発症してから今日で一ヶ月と五日(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170306)、まだ完治には時間がかかりそうだが、この片眼だけの病というのは、何をしていてもアンバランスな感覚があり、少し無理をすると再発の恐れも懸念され、非常にストレスがかかる。
冒頭の芭蕉の句を高校の頃だったかに知った時から、後悔のないよう、いつでも一期一会、機を逃さず、万事おさおさ怠りなく、という気持ちだけは心得るようになった。だが、自分の至らなさもさることながら、ここまで齢を積み重ねると、どうにもこうにも思うように前進できない不完全感が残り、長年の焦りや疲労が蓄積されていたのだろうと思う。
今回のことをきっかけに、ごく最低限のことだけに作業を限定してみると、(何も焦らなくたって世の中は回っているし、自分のできることなどほんの小さなことなのに、何を大きく考えていたのだろうか)と思ってしまう。
これから本格的な春に向かい、実は枯野どころではない。だが、旅の途中で思いがけず病に伏し、さまざまな夢が走馬灯のように駆け巡っていたのであろう芭蕉の心境が、十代の頃よりは実感として切々と迫ってくるようになった。