ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

北陸の旅の記録

ダニエル・パイプス先生(http://www.danielpipes.org/)は、お父様の職業やご自分の研究志向と外交分析の仕事のため、若い頃から家族や一人で国内外を旅行することが多く、年の半分以上は、国内各地(東海岸、西海岸、南部州)をはじめとして、日本以外のアジアや中南米やアフリカや南北極などを除く地球の大半を飛び回る生活。時差や気候の差など、体調管理が大変ではないかと心配なのだが、血筋でもあろうか、年齢を忘れて意欲的に活動されている。
もっとも、仕事柄、空港と飛行機の時間が長く、現地でもホテルでの会合やインタビュー、少し観光程度に各地を参与観察するぐらいで、それほど危険な冒険をしているのではなさそうだ。例えるならば、世界レベルのクラシック演奏家のようだ。空港とホテルとコンサートホールで過ごすことが大半で、年の半分は荷物詰めと荷物開きの連続らしい。衣装選びや楽器調整も必要だから、神経もエネルギーも酷使する。
いずれも、自分から出掛けて行くのではなく、招待がメイン。パイプス先生曰く「自分からの発案で旅行することは滅多にない。招かれて各国へ出て行くんだよ」。
そのように仕向けている面もなきにしもあらずだが、ともかく、仕事で忙しいことは人生の成功指標でもあるのだから、結構なことである。
ところで、我々は、主人の体が動くうちにということで、政府による年齢優遇制度と日頃から溜めてある各種ポイントを最大限活用して、ここ数年、日本各地を二泊三日程度で旅行している。旅行と言っても、普段の疲れをほぐすことが目的なので、大抵は温泉巡りのようなものだ。各種の温泉に浸かって、おいしい和食をいただいて、気分をリフレッシュして、また頑張りましょう、というパターン。それに、短期ではあれ一度でも訪れた場所は、その後、新聞や本やテレビのニュースなどで触れることになっても、自分なりの感想が持てるし、過去の経験を思い出せるのがいい。
このブログでも、霧島について書くつもりでいながら(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150209)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150214)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150908)、当座のあれこれで、すっかり流れてしまった。そんなこともあって、今日はワードに落としてあった北陸旅行をここに記す(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160203)。
1月3日から5日までは福井(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160106)。そして、1月末から2月2日まで、七尾(能登半島)と金沢へ二泊三日の旅行。今年はこちら方面から始まった。
さすがは北陸、電車を降りると身を切るような寒さ。その二週間前には雪が三十センチ積もったとのこと。小雪が舞い、道路沿いに雪寄せがあった。冬にアイスクリームを食べる風情と、最近の毎日新聞に大きく書いてあったが、本当に食べている人が何人かいた。あれを実行すると、その場はよくても胃腸が冷えるし、結局は血の巡りが悪くなって、体調を崩すことになる。寒い時には体を温める根野菜などを。暑い時には体の熱を覚ます水分の多い野菜を。昔からの伝統の知恵に学び、従うべし。
能登半島では温泉。夕食前と夜遅くと翌日の早朝の三回、温泉へ。二種類のお湯に、露天風呂やサウナも。これで、羽仁五郎氏の件で(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160126)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160127)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160128)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160129)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160211)凝り固まった嫌悪感と長年の不愉快な違和感が払拭できそうだ。
広々とした部屋に、高円宮久子殿下の発案なる環境意識啓発のメルヘンチックな絵本が一冊あった。人間は根源的に自己中心で悪いもの、という前提で、正直なところ、あまり楽しくない内容。私は性善説に立つものではないが、性悪説でもない。両方を兼ね備えているのが人間で、生涯かけて各々が自己改善を目指して歩んでいくのが人生というものではないだろうか。

翌日の金沢も、外を歩いているだけでも、ストレートに鋭く刺し込むような寒さ。まったりした湿り気を伴う大阪の寒気とは違う。肉布団の厚い私でさえ、冷え込みがこたえたが、文字通り痩せて骨と皮だけの主人など、そのまま「棒になった男」に冷凍しそうだったので、慌ててお汁粉屋さんへ入って暖を取った。
金沢は加賀百万石の前田利家公を誇るだけあって、この寒さにも関わらず、地元の人々が、お着物で給仕する。治部煮がおいしく体が温まり、熱々のほうじ茶も、とてもありがたかった。
兼六園は、二人共、少なくとも二度目。主人は物理学会の時に来たと言っていたし、私は大学三年の時に、近代文学の演習で、教授と級友達のグループと一緒だった。本当は近代文学館を訪れたり、たまたま読んでいた最中の西田幾多郎の碑などを見たりしたかったのだが、主人が行きたいという鈴木大拙を優先していたら、時間切れになってしまった。凍えそうな中、三宅雪嶺の生誕地も行けたし、犀川沿いの室生犀星の詩碑も見ることができたので、まあ良しとしなければならない。
ところで、歩けば10分足らずなのに、同じ地区で食堂を経営している、きれいにお化粧をした60代ぐらいのおばさんが、三宅雪嶺を知らなかったのには驚いた。「え?鈴木大拙じゃなくって?」と聞き返され、「いえ、三宅雪嶺です」と繰り返すと、「誰かしら、その人...?そういう人がこの辺にいたの?」
『真善美』『日本人』を書いた著者で、高校の日本史の教科書にも写真入りで掲載されていたのに。やはり、高校受験や大学受験のために、詰め込みで記憶力を鍛錬したのは、この歳になると、つくづくありがたかったと思うところである。
鈴木大拙館へは二日間、通い詰めたが、実は二日とも休館日。だからスマホに頼るな、と私はいつもうるさく言っているのだ。便利そうでいて、肝心の情報が更新されていなかったり、抜けていたりする。主人はいつも歩道の真ん中で立ち止まって、一生懸命にスマホをクリックしながら道を探そうとするのだが、私に言わせれば、近くのコンビニ店や不動産屋で聞いた方が、早くて確実だと。スマホでは5分、人に尋ねれば1分なのに、どうしてエネルギーや時間の節約をしないのか、私は不思議でならない。いつも旅の間、こういう点で喧嘩になるのが玉に瑕だ。
武家屋敷は、萩もそうだったが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140723)、落ち着いた佇まいで、整然と清潔感があり、私はとても好きだ。案外に塀が低く、お侍さん達も当時は小柄だったことを彷彿とさせる。
主人が楽しげに写真を撮ってくれたのは、実は足軽記念館。私が本来は足軽階級だと言いたげだった。実は「ユーリの家は、もっと上でしょう?」と言ってくれたのだが、実家のある地域は、足軽から関白にまで出世した秀吉公に縁ある地に近いと、高校時代に先生から常々聞かされていたから(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090224)、合っているといえば合っている。中の建物は、質素ながらもどこか庶民的で、格式の緩さに特徴があり、興味深かった。いろいろな物を見ておくことが大事なのだ。
老舗の商家に行くと、薬売りで繁盛したらしく、質素で堅実な佇まいの武家とは異なって、いきなりあでやかな彩り。金沢の結納品が、結婚式が派手なことで有名な名古屋も顔負けという感じで一面並べられていた。今でも続いているという。また、鮮やかな糸鞠もぶら下がっていて、見ていて楽しかった。(この糸鞠のミニサイズを、紛失しないための目印にと、お財布とパスポートにぶら下げて、昨年、イスラエル旅行に出掛けたのだが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150511)、入管でお役人が喜んだのがトルコ。笑って同僚に振ってみせたのがイスラエル。この文化的差異は印象的だった。)
記念に、二百年続いているという九谷焼のお店で、湯飲み夫婦茶碗を二組、購入した。万博にも積極的に出品した、と誇らしげな説明書きが、非常におもしろかった。
いろいろな地方へ出かけてきたが、やはり、仙台(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100712)、信州の松本(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100726)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100728)、伊予の松山(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120504)、長崎(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120729)、薩摩の鹿児島(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140209)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150209)、長州の萩(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140723)、紀州http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151110)、そして加賀百万石の金沢など、文化が発展して活発な地域が、私は好きだ。
明日以降、時間があれば、興味深かった1月30日の経験を記そう。