ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

事の続き

昨日(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141010)の続きを。

初回の私の保護観察付き授業の後、誘われて一時間ほどだったかサシで話をした。最初から私は、1990年代初頭からマレーシアのイスラーム復興を現地で肌身で経験してきたので、後々問題にならないように、辻褄が合わないことは避けたいと思い、ストレートに質問もし、自分の考えを伝えたつもりである。奥様が既に病魔に冒されていて、そのことについては同情申し上げたが、西洋医学を一切拒否すると断言され、相当な西洋憎悪を直接に感じた。結局は、奥様の文章も読んではみたものの、私にはどうにも理解できないままに(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090624)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090625)、話す機会もなく、従ってお悔やみもないままに終わってしまった。末期には、キリスト教ホスピスに入られたとも聞いた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080122)。

N氏と同席した研究会の日々を、押し入れの奥から引っ張り出すような感覚で思い出すと、当初、印象的だったのが、「若い頃、エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』を読んだ」という発言。知ってはいても読んではいなかったし、今でも読もうとも思わないが、あえてそういう発言を投じたところに、何とか初期研究会の参加者にだけでも、自分の思想の立脚点を理解して欲しいという願いでもあったのか、と考える。

何とも興味深いことに、たった今見つけた池内恵氏のフェイスブック上で(https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi?fref=nf)、イスラーム過激派に身を投じる日本の若者の背景を考察するのに、「自由からの逃走」をキーワードにする旨が書かれてあった。

フェイスブック記載の方が、ブログよりも率直で辛辣でもあるが、いかにも本来の池内家の家風らしさが出ているのではないか、と私は思う。公人としてのフェイスブックらしく、意見は書き込みできても、友達欄は出していない。昨日付フェイスブック記載は、自分用にワードに全文を落とすことさえ不可能な仕掛けになっている。

非常に大切な、思いの丈を吐露した文章だと思うので、以下に大事なポイントのみを列挙する。

・「中田氏は元同志社大学神学部教授←日本のキリスト者って、ダメだよね」。

←はい、仰せの通り。だから昨日付ブログはもとより、この『ユーリの部屋』全体のここかしこに、七年以上、書いてきた。外部の私でさえ、昔のイメージを尊重したまま入り込んで、すっかり路頭に迷ったのだ。あの三年ほどの錯綜した思いは、今でも思い出すだにどっと疲れる。ただし、あの頃、確か池内氏は、京都で開かれた別筋の大きな会合で、「もっとテレビを見てください。クリスチャンが、とてもいい感じで出てくる」みたいな発言をなさっていませんでしたか?

・「数名の改宗学生を後に残して。同志社大学神学部に子供を入れたら、先生に折伏されてイスラーム教徒になって帰ってきた、という親の気持ちはいかばかりか」。

←はい、仰せごもっとも。若いのに、自分こそがイスラーム(換言すれば人生の解答、つまり「イスラームが解決だ」)を知っているという、奇妙な自信に満ちあふれていた学生達だった。新米改宗者独特の特徴と言ってしまえばそれまでだが、「何年マレーシアに住んでいても、わかっていませんね」という、まるで立場が逆転した傲慢な態度だった。
問題は、中には改宗してしまってから「こんなことだとは知らなかった」という感想を漏らす人も含まれていたことである。本や大学の講義だけで、「あ、イスラームって、私の求めていたものだ。イスラームなしに、私は生きていけない」と思い詰めてしまう女子学生もいた。だからこそ、学生が見聞したものをそのまま信じ込まないように、という当初の配慮で、私が呼ばれたらしかったのだが。

・N氏について「日本とイスラーム世界の壮大なギャップに自ら落ち込んで生まれた稀有な人材である」。

←言い得て妙だが、取りようによっては非常に嫌みで、皮肉たっぷりのスパイスが利いている。これも池内恵氏だからこそ、書けるし言えることなのだろう(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140613)。

・「まあ日本社会の多数派は彼のことを単に奇矯な人物としか見ないでしょうけれども」。

←繰り返すが、学問的には厳しく忠実だと、私は当初から思っている。何と言っても、イブン・タイミーヤが出発点(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080421)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120709)。学歴も経歴も、お見事である。解放党の支持者だと(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090421)、冒頭のサシ会話で自ら言われた。しかも、日本語で表現してくれているので、ダニエル・パイプス先生の当初のギュレン運動の見識違いの点でも、おかげさまで自信を持って意見交換ができたのだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130718)。その意味で、池内氏は公平な見解の持ち主だ。

・「内田何とかさん」「内田某のアレ

内田樹氏のことだろうか。私の授業に出席していた黒スカーフの改宗女子学生が、N氏の本棚から借りて読んでいたらしかったので、十年と半年前のその時、初めて知った。私は全く読んでいないが、朝日新聞で大きくインタビューが掲載されていたのを何度か覚えている上、N氏と二人で並んだ写真付き本の広告を見たこともある。

・「嘘はいけないが、信仰を広めるために、勝手に誤解して自己の願望を投影してくるバカな有力知識人を利用するのはイスラーム法学的に許容される行為だ、と中田さんは自分の中で正当化して内田さんと付き合っているんだと思いますよ」。

←「イスラームを守るためなら嘘をついてもいい」(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111217)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20120301)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130605)と、改宗学生も言っていた。つまるところ、「バカな有力知識人」とは‘Useful idiots’日本版なのだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121121)。「私は学者/知識人ですから」と自称する輩ほど、タチが悪い。この言葉は、広東系マレーシア人のクリスチャン神学者から教わったが、さすが、ムスリム圏内の華人は鋭い、と今も感謝している。過去ブログをどうぞ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111217)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20111227)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120120)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140611)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140708)。