ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

土俵は常にグローバル

昨晩のN響アワーで、チョン・ミョンフン指揮、ジュリアン・ラクリン(ヴァイオリン)によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴きました。
演奏前のインタビューが興味深く、どの演奏者にとっても、優秀であればあるほど、謙虚に厳粛な気持ちで向かわざるを得ないのが、ベートーヴェンのこの曲だそうです。
演奏については、カデンツァが見事で、楽章毎の奏き分けもすばらしく、うっとりとして聴き入ってしまいました。若い奏者らしく、時々、楽団員の方を向いて表情豊かに表現されていたのも楽しかったです。
チョン・ミョンフン氏は独特の色気のある指揮者で、その人柄からも人生哲学からも、多くを学ばされる方です。確か、初来日は諏訪内晶子さんとの共演だったかと思いますが、当初は日本や日本人に対するイメージが芳しくなく、ためらいがあったとインタビューで答えられていました。しかし、実際には、オーケストラの団員やスタッフなどが皆、心温かくて、印象が変わったとのこと。率直なご意見に、感銘を受けました。
そこで思い出したのが、『音楽の友』(2011年3月号)のインタビュー記事。ここで、要点の一部を抜粋いたします(pp.14-15)。

・マエストロが考える、いいコンサートマスターの条件


第1に、ソリストとしての技術。突然、コンチェルトのソロを依頼されてもソリストとして弾けなければなりませんから。
第2に、室内楽奏者としての実力。
第3には人格者としてオーケストラのメンバーから尊敬されるかどうか
第4は指揮者との相性です。

そして、ありがたいことに、こんなこともおっしゃってくださいました。

「私はソウル・フィルの団員に『東京にはアジアの中でも最高の演奏家が集まっている。国際レヴェルのオーケストラになるためには、まずは日本レヴェルに到達することが第1の登竜門である』と日々言っています。ソウル・フィルはこの5年間でようやく日本のオーケストラの基本的なレヴェルに到達できたという自信ができたからこそ、東京で定期演奏会を行うことにしたのです。」

やはり、世界一流の人は言うことが違うなあ、と。誇り高き韓国オケの団員に、日本を引き合いに出してハッパをかけるなんて、それにしてもすごい!
しかし、喜んでいる場合じゃありません。科学技術面と同様、すぐに追い抜かれていくかもしれませんから。

実は、2009年秋に、マレーシアのカイロス研究センター代表のDr. Ng Kam Weng(参照:2008年4月3日・4月25日・6月14日・11月4日・11月7日・2009年4月28日・10月26日・10月27日・11月3日・2010年6月15日・6月26日・7月3日付「ユーリの部屋」)とオフィスで面会した際、開口一番に聞かれたのが、「あんた、韓国語はどのぐらい読めるのかね?」
「若い頃、数年間勉強したので、ハングルは何とか読めますし、文法構造はだいたい理解できましたが、論文は読めません」と答えると、「あんたと同じ関心を共有しているリサーチャーが、韓国から来ているよ。一緒に研究してみてはどうかね?」と言われました。とてもうれしかったのですが、まだこちらに余裕がなく、ご連絡はしていません。でも、共同研究と言わずとも、一緒に何かできたら益することが多いのは確かでしょうね。

そう言えば、もう10年ぐらい前に、「国際学会で発表してみない?」とお声がかかったのに、その時も「え!こんな状態では、まだまだ...」と引き下がってしまい、チャンスを逃したということがありました。そうこうするうちに、私よりも若い方達が、どんどん、マレー語でも英語でも国際学会で発表するようになり、またそれが、当然の条件にもなってしまいました。

世の中の変遷は激しく、ついていくだけでも大変ですが、せめて化石化した骨董品になる前に、少しは何とかできればと思います。土俵はいつもグローバル!