ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

得難い経験  その2

おととい書いたヒントの答えは、まだ未整理で、ブログ公開できるに至っておりません。ただし、「ヒントその2」として、以下にジャーナルの一部を引用させていただきます。(ユーリ)

2009-12-18 「東アジア地域協力の現況」中西寛京都大学教授) (http://www2.jiia.or.jp/pdf/column/20091221-nakanisi.pdf


*本コラムは、韓国外交安保研究院と当研究所の主催で2009年10月29-30日にソウルで行われた日韓協議に際し作成したディスカッション・ペーパーである。


4. 鳩山政権の発足と東アジア共同体


 8月30日の総選挙の結果、日本では民主党が圧勝し、社民党国民新党と連立した鳩山由起夫政権が発足した。選挙前の公約、いわゆるマニフェストの大半は内政問題に関してであり、外交についてはごく一般的な表現にとどめられているが、首相就任直後に鳩山首相が国連関連の諸会議や首脳会談、G20首脳会議に参加したこともあって新政権の外交姿勢に注目が集まることになった。
 中でも鳩山新首相が特に関心を抱いていると思われるのが、アジア外交であり、東アジア共同体の推進である。鳩山首相は早期に村山談話の継承を表明し、歴史問題の政治問題化を回避する姿勢を示した。更に、アメリカで開かれた日中、日韓首脳会談に続いて10月上旬には韓国、中国を歴訪し、日中韓首脳会議に出席した。
 日中韓首脳会議で鳩山首相は「日本はアジアの一員であり、日米関係を重視しながらも、アジア重視の政策を進めていく、日中韓で実際の協力を進め、開放性、透明性、包含性という考えの下に三国を核として地域協力を進め、その先に東アジア共同体を構想していく」と述べ、日中韓主導で東アジア共同体構築を目指す意向を表明した。また、鳩山首相は環境・気候変動、大学間交流、経済協力等で三国間協力を進める提案を行った。特に経済協力では「日中韓投資協定の早期妥結」「日中韓FTAに関する民間研究の結果を政府間で議論」といった内容に言及し、日中韓の経済緊密化を重視する姿勢を示した5。

また、日中首脳会談では東アジアガス田問題に言及しつつ、ヨーロッパの石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立の例を挙げ、東シナ海を「友愛の海」とする提案を行った。対して温家宝首相は東シナ海を「平和・友好・協力の海」にしたいと述べつつも、この問題は機微な問題であるので、国民の理解と支持が必要である旨述べ、鳩山提案に対しては明確な姿勢を示さなかった6。また、日韓首脳会談でも李明博大統領は、東アジア共同体が基本的には正しい方向であるとしながらも、前提となるいくつかの事案が解決されなければならないとした7。
 そもそも鳩山政権の唱える東アジア共同体構想の具体的内容はまだ明らかになっておらず、その範囲や態様も示されていない以上、他国の反応が曖昧なのも理解できる。恐らく東アジア共同体の主張は、民主党内に存在する複雑な対外路線の公約数、すなわち自民党の対外政策と見なされているもの、典型的には「アメリカとの関係が良好ならアジアとの関係はうまく行く」という小泉元首相の言葉のような姿勢への批判があり、アメリカとの関係は維持しながらもある程度の距離を保ち、「自主性」を持ちたいという感情があるのだろう。加えて、鳩山首相が唱える「友愛」概念の発案者である祖父であり元首相の鳩山一郎は、この言葉をヨーロッパ統一運動を推進したクーデンホフ・カレルギーの著作のfraternityという言葉の翻訳として使用したという背景もある。それは原子論的な個人主義を批判して社会的連帯を訴える思想であり、クーデンホフ・カレルギーはfraternityを実現する共同体としてヨーロッパを抱いた8。 鳩山首相の頭の中には、ヨーロッパ共同体に相当する構想として東アジア共同体構想がある可能性がある。しかしヨーロッパ統合は、二つの世界大戦の記憶や冷戦の文脈において可能だったのであり、今なお各国の主権との関係が問題になっている現実を踏まえると、鳩山政権の友愛外交が東アジア共同体へと結実する道は険しいといわねばならないだろう。しかし鳩山政権の問題提起は、やや下火となっていた東アジア地域協力論に一石を投じたことは確かである。 (p.4)


5 http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/area/jck/jck_sum_gai.html
6 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/jc_sk_0910.html
7 http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/09kyoudou.html
8 鳩山由起夫「祖父・一郎に学んだ『友愛』という戦いの旗印」『ボイス』2009年9月号(http://voiceplus-php.jp/archive/detail.jsp?id=197)(p.5)

(引用終)