ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

好きなものに熱中できる幸い

音楽の友』2009年5月号に掲載されていた、庄司紗矢香さんのインタビュー記事「音楽の星に生まれて09」(pp.112-115)は、なかなか充実した興味深いものでした。早速、近所の図書館でコピーをとり、じっくりと読みました。
可愛らしい顔立ちと小柄ながら成熟した演奏、のびのびした音楽表現力とインタビュー時の寡黙で落ち着いた様子とのギャップなど、個性の上でも魅力的でしたが、もう彼女も26歳、すっかり大人びてきました。この1月には、シューベルトブロッホメシアンブラームスなどのヴァイオリン・ソナタを堪能しましたが(参照:2009年1月17日・1月23日・1月26日付「ユーリの部屋」)、この記事を読んでいるうちに、また演奏会に行きたくなってしまい、早速、リゲティの協奏曲を聴くため、大阪シンフォニー・ホールでのチケットを予約しました。平日なのと、恐らくは大阪フィルとの共演、しかも現代曲(1992年初演)のせいか、一か月前なのに、A席でもまだ充分空いていたようです。また、6000円とお安く、いい席がとれました。
こういう時をチャンスと見るべきでしょう。ポピュラーな曲の場合、半年前でも席を予約するのが本当に大変なのですが、もし、その演奏家が思いを込めて選曲し、長い間準備されてきた曲ならば、万難を排してでも行くべきだろうと思います。

「その頃からずっと興味をもっていて、その宇宙的で宗教的な空間、その光と色にすごく魅せられていた。いつかはぜったい弾きたいなと思っていて、2年くらい前にスコアを手に入れて、ガヴリロフ先生に楽譜もコピーさせてもらい、演奏会が実現することを祈って、ただひたすらひとりで勉強していたんです。今回はそれが叶ってすごく嬉しいです。音ひとつひとつを読みとるのがたいへんな作業でしたが、その後ガヴリロフ先生からもいろいろなヒント、リゲティとの直接の会話とか音の変更、フレーズのとりかたを教えていただいて、だんだん謎がとけていった。どんなに弾きこんでいる曲にしても、それはつねにエキサイティングですからね」(p.114)。

ではお楽しみに、といったところです。やっぱり、なんだかんだいって、私は音楽が好きなんだろうと思います。このところ、気分の落ち込むことが多かったのですが、この演奏会のニュースやインタビューを読んだら、途端に元気になって張り切り出しましたから。利害なしに好きなことがあり、それに夢中になれる環境を感謝しています。
彼女は、完全主義的というのではないけれど、一度これと決めてやり出したら、徹底して打ち込むタイプなのだそうです。また、好奇心は相当に強そうです。絵を描き始めた、としばらく前のインタビューでもおっしゃっていましたが、5月22日から6月13日まで京橋(東京)で個展も開くとか(無料)。これは、画家でいらっしゃるお母様の影響も大きいのでしょうし、本当にチャンスを逃さず、表現主体としての自分をエンジョイされているようですね。才能のみならず、機会にも相当恵まれているご様子。もっとも、一人で並々ならぬ努力、努力の日々を小さい時から続けてこられたからこそですが。

「ほんとうに自分がやっていきたいことを見失わないように増やすんです」「一度きりの人生だし、興味のあることはすべてやっていきたい」「他をみることで発見することはほんとうに多いので、音楽だけを切り離してはいけないものだと思います」(p.113)

ビジネスやマーケティングやマネジメント、キャリアなどは難しい領域のようですが(それはそうでしょう、ここまで一人きりでいつも勉強して練習して演奏旅行の日々であれば、考えている余裕などあるはずもなく...)、でも、ここまで自己をしっかりと確立できるなんて、時代にも恵まれているんだろうと思います。ただし、読んでいる本や見ている映画などは、やや古めかしい感じがするのですが、クラシック演奏家なら、やむを得ない帰結なのかもしれませんね。
とにかく、若い演奏家から学べることはたくさんあります。元気づけのみならず、私まで視野が広がるので、こういう時間を大事にしたいと思います。