ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

生産性と創造性の素

昨日のブログでは、いささか逆行した精神状態に戻ってしまいました。
若い頃から、多くの方々に「どうして論文をもっと書かないのですか」「やればできるのに、なぜ学位がないんですか」「そんなに本を読んで勉強しているのに、どうして教えないんですか」などと言われてきました。その度に、「そういう器じゃないですから、わたし」などと真面目に悪気なく返事をしていたんですが、思えば、そう答えることで、相手をかなり当惑させていたらしいのです。
帰ってきた主人が言いました。「都市銀行の銀行員って、保守的なのかもね」「ユーリは抑圧体制下で過ごしてきたんだよ。だから、今、子ども時代の取り返しをしたいんだね」「だけど、僕だって、インターネットが家庭でここまで普及するとは思っていなかったよ。90年にMITに留学して、初めてインターネットを使うようになったんだから」。もちろん、理系の主人の言っているのは、日本の大学で、実験室にあった巨大なコンピューター装置時代から見て、という話です。
学歴や居住地と、精神の開明度は別個のものだと私が考えているのは、こういう環境で育ったからです。主人の母方の亡くなった伯父さんは、うちの父より4歳年上でしたが、70過ぎても新しいパソコンを買い込み、「環境問題に関する論文を書いて大学に提出するんだ」と意気込んでいました。岡山の山手に住む人で、学生時代は京都の大学で化学を専攻していましたが、やはり、理系の方が進歩的なんでしょうか。
ともかく、神尾真由子さんのようなタイプのヴァイオリニストは、うちの親からは絶対に出てきません。音楽学校には長年通わせてもらったものの、家でFMラジオのクラシック音楽を聴いていると、「電気代がもったいないから、消しなさい」などと時代錯誤的なことを言われたんですから。(←この話をすると、いつでも主人はびっくり仰天します。)

ところで、今日もお年賀状が届きました。東大出身で、世界有数の大学で若くして学位を授与されたばかりでなく、数々の輝かしい受賞歴をお持ちで、今は京大大学院で教鞭をとっていらっしゃる方の奥様からでした。私とたまたま同い年の奥様も、東大出身の優れた研究者なのですが、なんと、いつの間にか、お子様が5人になっていたのです。知り合ってから、毎年お年賀状をいただく度に、お子さんの顔と名前が一人ずつ増えているような気がしていたのですが、まさか5人とは!
昔は、「律儀者の子だくさん」とか「○○人の子だくさん」などという表現を耳にしましたが、論より証拠、因果関係は全くないということが、これで判明しました。
それにしても、知性や学的側面のみならず、種の保存の点でも、実に生産的というのか意欲的というのか積極的というのか...。学問の進展に寄与するばかりでなく、少子化対策にまで貢献されているなんてあっぱれです。学者は体力勝負、としばしば聞きますけれども、(なるほど)と思いますね。ご主人の方はともかくとしても、奥様の方は、物理的に出産前後は勉強どころじゃないでしょうし、食べ盛りの小さいお子さん達の世話など、何かと大変だろうと拝察するのですが。
考えてみれば、私達は、何事も先走って考え過ぎ、慎重になり過ぎたのでしょう。優秀な研究者は、どの分野でも、柔軟で独創性豊かで新しい考え方を持っていますが、安定性や規範性で縛ることこそ、森羅万象の生産力を窒息させることに、うちの親も早く気づいてほしかったです。