ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

主婦が研究・勉強を続けるとは

国内であれ国外であれ、外泊前の一週間ほどは、何かとバタバタ緊張感が高まります。この一種高揚した気分というのは、平凡な日常にスパイスを与える点で大切なものだと思います。そうはいっても、音楽のように、人生には緩急のリズムが必要ですね。帰って来て平常パターンに戻るには、一週間ほどかかります。「そんなに遅いの?」とおっしゃらないでください。家庭環境や年齢に合った暮らしぶりというものがあるのですから。

出かける前の荷造りはすぐにできるとしても、宿泊地と足の確保、これだけは早めにしておかなければなりません。東京なら大丈夫、とはいえ、時期と場所によっては結構時間がかかるケースもあります。国内ではなるべく飛行機を避ける、というのが私の原則です。一度、九州での発表で、飛行機で快適に往来しましたが、その時は天候に恵まれていたのが幸いでした。

独身時代と異なるのは、主人の仕事との調整です。勤め人というのは、ワンパターンのようでいて、案外それなりに組織の事情というものがあります。例えば、先日は懇親会とやらで、帰宅が10時半でした。懇親会は、会費が高い割には、それほど落ち着いて料金分食べられないものですが、帰宅後、「何か軽く食べたいな」という時にも冷蔵庫が空というのでは申し開きができません。ともかく、好きなように勉強させてくれる主人ですが、夜遅く帰ってきた時に私が家にいるのといないのとでは、疲れ具合が格段に違うようです。安心感、という目に見えないものなのでしょうか?これはお金で換算できないですからね。

家事全般一通りが何とかできる主人ですが、帰宅が遅いのにそれから自炊というのは、いくら何でもかわいそうです。睡眠確保も必要。というわけで、出発前には、保存のきくデザートや煮物などを作り置きしておき、日付を入れたメモを添えます。帰ってきてから冷蔵庫を開けると、ちゃんと食べてあるのが、なんともかわいいですね、何だか子どもみたいで…。それと、掃除も念入りにして、洗濯物やアイロンがけなども、事前に片づけておかなければなりません。万一のために、借りた本などは返却し、連絡事項があればそれもリストにしておき…、となすべきことは結構あります。

結婚前は、主人も私も同じ時期に、アメリカとマレーシアでそれぞれ一人暮らしを経験していたので、二人が同居するなんて簡単だと思っていました。しかし、それは頭で考えた想像の産物!所帯を構えるとは、一人と一人がただ同じ屋根の下で一緒に暮らす、というだけではないのでした。結婚には、当然のことながら、共同体的な意味も含まれます。「家庭はプライベート」と割り切ることは、本人がたとえそう思っていたとしても、実は法的にも社会的にも、それだけでは済まされない仕組みがあるのです!

フルタイムで働いていらっしゃる家庭持ちの女性専門職の方達がすごいな、と思うのは、こういう時です。いったい、どうやってやりくりされているのかしら?お姑さんや実家のおかあさんに手伝ってもらう、というのは別として。

主人の勤務先は基本的に男性中心の職場ですが、それでも女性の専門職も混じっているそうです。一度、主人と町を歩いていたら、同僚の女性なる人にバッタリ出会ったことがあります。その方は既婚者で、お子さんも二人いらっしゃるそうですが、いかにも堅実そうな落ち着いたタイプの方で、私もぜひ見習いたいと思いました。主人いわく、「どんなに優秀でも、女性の子育て中は大変だろうな。『保育園に迎えに行かないと』とか『子どもが熱出したから遅れます』なんて連絡はよくあるからな。でも、そんな中でもよく仕事を続けているよって感心するなぁ」とのことです。

社内で独身を貫く女性は非常に稀で、たいていは、学生時代の友人と結婚するか、社内結婚か、お見合いだそうですが、唯一の欠点は、部長以上の役職には就きにくいことらしいです。ただ、理系の女性の場合、そのことを声高に問題視する人もあまりいないようで、企業に入って専門を生かして仕事を続ける以上は、子育て中の多少の遅れはやむを得ないと承知済みとのことです。それにしても、同性としてすごいなあ、と思います。

私の場合、結婚するなら企業勤めの理系研究職がいいと思っていました。交際中に主人から、将来的には国内外の転勤もあるかもしれないという話を聞いていたので、最初から大学に専任として残るなど、もともと眼中にありませんでした。別居結婚ならば、そもそも結婚する意味がないとも考えていました。それより、どんな環境に置かれても、一人で何か続けられるものを持つ適応性の方が重要と思っていました。

それ以上に、20代後半から60代まで、誰も思いつかないような新しいアイデアを毎年出し続けて、書き続ける自信が全くなかったからでもあります。最近メディアでもしばしば話題になる、博士号取得者や博士課程の方達の就職難や陰湿なアカハラ問題や自殺について、私自身は1980年末頃、とうに予測できていました。ですから、そういう道を選ばなかったのです。ですから、「まだ非常勤なんですか」とか「そんなテーマを続けていて、将来どうするんですか」というありがたくもお節介な(?)助言は、私にとって馬耳東風というのか、そもそもあまり意味がないのです。

必要に応じて大学図書館を使わせていただき、口頭発表にふさわしい場があり、論文投稿の道さえ開かれていれば、今のところは、非常勤でも特に困らないです。万が一にもマレーシア関連で専任、ということが仮にあるとしたら、今のように異なる分野の本を読んで勉強する時間もなくなり、しょっちゅう家を空けなければならず、マレーシアにも頻繁に出かけなければならなくなるでしょう。そんな生活はまず無理です。これは、女性の自立の問題ではなく、現実感覚からくるものです。

と言ったら、ものすごく怒り出した女性教員が複数いました。「そういう人がいてもらっては困る!」と。まさか、私が無理に無理を重ねて、路頭に迷う道を期待されているとか??

あ、ここで、一つ妙なエピソードを思い出しました。何年も前のことですが、研究会の後、ある専任の女性二人が、「私達、収入があるから指定席切符を買って乗るわね。じゃ、これで」と、非専任である私ともう一人の女性参加者に向けて、颯爽と手を振ってきました。何だか変な気がしたのは、その駅は始発だったからです。つまり、別にわざわざお金を払って指定券を買わなくても、誰でも降車駅まで、しっかり座席に着くことができるわけです。普通の特急電車ですから、新幹線のグリーン車じゃあるまいし、特に車両に差はないのです。その時は、(ま、いいか)と思い、私も普通切符を買って悠々と座席に落ち着き、ゆったり楽しく帰ってきました。
その後、ある男性に話したところ、「そういう話を聞くと、偏見かもしれないけれど、キャリアウーマンって浅はかなんだよな、と思ってしまう。そんなところで、見栄を張らなくてもいいだろ!」という返事が返ってきました。「それに、主婦になったこともない人が『主婦は社会的地位が低い』と言っているなんて、それもちょっとなぁ…」とも。確かに…。
女の浅知恵??自戒、自戒!!