ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

戦後思想と出版の衰退

http://agora-web.jp/archives/2022898.html


朝日・岩波が支えた戦後の「表の国体」が終わる
池田 信夫
2016年11月29日


・神田・神保町信山社が、東京地裁から破産開始決定を受けた。


アゴラの書評欄でも今年103冊書評したうち、岩波は3冊だけだ(うち1冊は「読んではいけない」本)。その原因は、原発派のパンフレットに化けた『科学』を見ただけでもわかる。今年の岩波新書からざっと拾うと、こんな感じだ。

 ・池内了『科学者と戦争』
 ・青井未帆『憲法と政治』
 ・柄谷行人憲法の無意識』
 ・本間龍『原発プロパガンダ
 ・金子勝児玉龍彦『日本病』

著者とタイトルだけでおなかいっぱいで結論がわかるので、わざわざ買って読む人は少ないだろう。戦前には朝日新聞を初め新聞がこぞって「時局迎合」する中で、岩波だけがアカデミズムを守り戦後は『世界』が論壇の中心だった栄光の歴史も、終わりが近づいているようだ。


・これはリベラルの知的生産力が失われたことを象徴している。戦後しばらくは自民党は保守反動で、岩波はそれを批判する革新的なメディアだというイメージがあった。最盛期は『世界』編集長の安江良介が美濃部都知事の秘書になって、全国の革新自治体をリードした60年代後半だろう。その後も安江は役員から社長になり、岩波の左派路線を決定づけた


・ただ実質的に岩波の編集権をもっていたのは、東大の左派系教師だった。教養学部の教授会の内容は、翌日には岩波に筒抜けだったという。


岩波は社会主義を志向し、経済学の本も「近経」はほとんど出さなかったが、マルクス主義の学問的な生産力はなくなった労働組合も日共系で労使関係が悪く、岩波の経営は悪化した


・安江が死去した後の2000年代には、岩波でも左派の影響力が小さくなったが、このころには出版業界が不況業種で、まともな人材が入ってこなくなった


・朝日・岩波的な護憲論は戦後の表の国体だったが、それは社会主義勢力の裏のイデオロギーを隠すタテマエとして使われただけで、憲法9条で国が守れるなどと思う人はいなかった。ところが社会主義が崩壊したので、形骸化した表の国体だけが残った。


マルクス主義にはそれなりに知的な価値があり、論じる意味も(20世紀前半までは)あったが、21世紀になって中身のない「立憲主義」なるお題目をとなえている出版社は岩波ぐらいで、それを信じているのはシールズのような低能の学生だけだ。改革しようにも人材が払底し、もはや紙の本がいつまであるのかもわからない。

(部分抜粋引用終)
...ということなのだが、私の学生時代には、文系であれば一般教養科目で人文系と社会科学系の三科目ずつを最低でも必修という指定があり、参考文献の紹介を通して、否が応でも岩波文庫岩波新書のお世話にはなってきた。
今でこそ、上記の文章のように左派思想の限界がはっきり提示できるが、1980年代半ばでは、やはり知的生活を送ろうと思えば、違和感が多少あっても、頑張って岩波文庫を出来る限り読破せねば、という意気込みが普通であった。テレビや新聞のメディアも、その路線だったと思う。特に夕刊コラムでは、当然のように「進歩的知識人」が登場していた。
昨日のブログに書いたように(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20161208)、私の場合は、特に大学では苦労し、同時に、「自由」「自立」という言葉に解放感を味わいながら左派思想を消化するよう努めつつも、家庭においては母方の祖母が、いろいろと戦後の価値観の変化を嘆きながら昔話をしてくれたので、成長過程ではバランスを取るのが大変だった。でも、今にしてみると、ありがたかったと思う。主人の母方の家もそうだが、戦前が良かったという人々は、大抵、恵まれた階層だったということだ。
社会主義思想は、反戦平和を旗印に、経済面では地均し化を推し進めていくので、特に敗戦国の日本にとっては、乾いた土が水を吸い込むように、本質を知らずに、良きもの、新しきものとして受け入れていたのではなかったか。それに、隣国が中国と旧ソ連だったので、ある程度は理解する必要にも駆られていた。
以下に、先月下旬と今月上旬の二回、町内の歴史資料館を会場に、教育委員会が後援し、退職教職員の会が主催した、蔵書の無料頒布会でいただいた本のリストを列挙する。計28冊だが、希少本も含まれているだろう。古本屋さんで購入したら、かえって高くつくだろうに、町内で私達がいつも選挙投票に行く小学校で元校長だった故人の所蔵だとのことで、全部そのまま自由に選んで持って帰ってきた。
天皇制、共産主義マルクス主義反戦平和、部落問題、女性問題、歴史などの種類が目立ったのは、この小学校の教員の傾向を表しているとも言えるが、私の世代ならば、一種馴染みのあるものでもある。主人も私も、実家には共産主義マルクス主義社会主義の本など一冊もなく、大学に入って読む必要に駆られたというのが実態だが、学校教員ともなれば、さまざまな背景や家庭環境の児童を育てなければならず、幅広く通用する思想としては、社会主義が最も汎用性が高かったとも言える。換言すれば、「学校に行けば、自分にも将来が開ける」「あの先生に相談したら、道が開けるかもしれない」という希望を与える思想であったのだ。
今は、それが行き過ぎになってしまったので、バランスを取るために右派ないしは保守派の言論が前面に出ているが、本来ならば、あえて口にしなくとも、水や空気のように当然のことだったはずだ。
この大量の蔵書を所蔵されていた方は郷土史家としても有名で、従って、マルクス主義史観で町史を綴られたのかどうかは、興味のあるところである。

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・Lily2 ‏@ituna4011
音楽の歴史 (1957年) (岩波新書) 山根 銀二 https://www.amazon.co.jp/dp/B000JAW2FW/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_fOOsybBY6W5TT … via @amazonJP


・Lily2 ‏@ituna4011
茶の文化史 (岩波新書 黄版 89) 村井 康彦 https://www.amazon.co.jp/dp/400420089X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_GNOsyb09CYZQH … via @amazonJP


・Lily2 ‏@ituna4011
憲法義解 (岩波文庫) 伊藤 博文 https://www.amazon.co.jp/dp/4003311116/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_lNOsybXB49J7B … via @amazonJP


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天皇家の戦い (新潮文庫) 加瀬 英明 https://www.amazon.co.jp/dp/4101309019/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_ELOsybP9DC3RS … via @amazonJP


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拝啓マッカーサー元帥様―占領下の日本人の手紙 (1991年) 袖井 林二郎 https://www.amazon.co.jp/dp/B000J6SV42/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_1KOsybV3TAKX4 … via @amazonJP


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昭和天皇に背いた伏見宮元帥 (徳間文庫) 生出 寿 https://www.amazon.co.jp/dp/4195993601/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_hKOsybHYF0W4Y … via @amazonJP


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明治精神史 上 (講談社学術文庫 19) 色川 大吉 https://www.amazon.co.jp/dp/4061580191/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_JJOsybSQZN5NN … via @amazonJP



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世界の歴史 (16) 現代―人類の岐路 (中公文庫) 貝塚 茂樹 https://www.amazon.co.jp/dp/412200229X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_WIOsybAJY8WNH … via @amazonJP


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南京事件―「虐殺」の構造 (中公新書) 秦 郁彦 https://www.amazon.co.jp/dp/4121007956/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_pIOsyb36TCJ53 … via @amazonJP


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祖国を興すもの (1947年) 南原 繁 https://www.amazon.co.jp/dp/B000JACNNS/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_MHOsybWJF2T1X … via @amazonJP


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パウロ (1948年) (温故小文選〈第4〉) 波多野 精一 https://www.amazon.co.jp/dp/B000JAQRF8/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_aHOsybQVET09E … via @amazonJP


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鈴木大拙・禅選集〈第1巻〉禅の思想 (1960年) 鈴木 大拙 https://www.amazon.co.jp/dp/B000JBEN8A/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_eGOsybJYSV3D7 … via @amazonJP


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世界史の中の 一億人の昭和史 1巻 (一億人の昭和史) 毎日新聞社 https://www.amazon.co.jp/dp/B00DAO68FE/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_mFOsybPFYXGNK … via @amazonJP


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マルコ・ポーロ東方見聞録 (現代教養文庫 656) マルコ・ポーロ https://www.amazon.co.jp/dp/4390106562/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_sEOsyb6GV567A … via @amazonJP


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芭蕉俳句集 (1950年) (岩波文庫) 松尾 芭蕉 https://www.amazon.co.jp/dp/B000JBGJP0/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_bDOsybQCPFY17 … via @amazonJP


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日本唱歌 (岩波文庫) 堀内 敬三 https://www.amazon.co.jp/dp/400310921X/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_3BOsybXKNGKQX … via @amazonJP


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私の中の聖書 (1981年) (集英社文庫) 曽野 綾子 https://www.amazon.co.jp/dp/B000J7W42G/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_EBOsybXQ1X4KE … via @amazonJP


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万葉の人びと新潮文庫) 犬養 孝 https://www.amazon.co.jp/dp/B01GJGMOXO/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_WAOsybR2CM0SV … via @amazonJP


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声 (1) −1945-1947 (朝日文庫) 朝日新聞社 https://www.amazon.co.jp/dp/4022602813/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_uAOsyb6ZMVMNW … via @amazonJP


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日本人とユダヤ人 イザヤ・ベンダサン https://www.amazon.co.jp/dp/B00G460158/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_3zOsybKGNEMYH … via @amazonJP


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この地球に生れあわせて (講談社文庫) 湯川秀樹 https://www.amazon.co.jp/dp/B00LO154OG/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_zzOsybVJYVDCN … via @amazonJP



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共産主義の系譜―マルクスから毛沢東まで (1970年) (角川文庫) 猪木 正道 https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9OEKE/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_DyOsybNJY33HV … via @amazonJP


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共産主義 (1957年) (現代教養文庫) ハロルド・J.ラスキ https://www.amazon.co.jp/dp/B000JAWA18/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_4xOsybN6A374Z … via @amazonJP


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坂崎出羽守 (1972年) (津和野ものがたり〈4〉) 沖本 常吉 https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9GPPQ/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_wxOsybV76VKP2 … via @amazonJP


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愛に生きる―才能は生まれつきではない (1966年) (講談社現代新書) 鈴木 鎮一 https://www.amazon.co.jp/dp/B000JAA178/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_WwOsybQHM2RZ1 … via @amazonJP


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羽仁五郎 対談 現代とはなにか 日本評論社編集部 https://www.amazon.co.jp/dp/B01H1MS7EA/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_cvOsybTSF7B5F … via @amazonJP


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育児を考える―どういうしつけがいいか (1970年) 松田 道雄 https://www.amazon.co.jp/dp/B000J9OAOE/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_euOsybJYJ6DS8 … via @amazonJP


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論語新釈 (講談社学術文庫) 宇野 哲人 https://www.amazon.co.jp/dp/4061584510/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_ItOsyb6Y7MFRG … via @amazonJP

(転載終)
日本人とユダヤ人』は、高校の現代国語の模擬試験の読解問題で出題されたことがきっかけで、学生時代に一度読んだが、その後、そのいかがわしさを巡る議論の本も読み、しばらくは放置していた。今回、手元に置くために、ありがたく頂戴した次第である。
マルクス主義に関する本は、今こそ目を通しておくと、現代の特徴をより明確に把握することができるのではないか、と思っていただいてきた。パラパラとめくると、何だか懐かしいような笑えてくるような、悲喜こもごもといった感覚である。本を読むことによって、ニュースだけで右往左往しない基盤を作りたいのだ。
ツィッターのカウント数を調べると、さすがにマルクス主義系の本はアクセスが殆どない。最も人気が高かったのは、色川大吉『明治精神史』だった。他にも、秦郁彦南京事件』と湯川秀樹『この地球に生れあわせて』と鈴木鎮一『愛に生きる』と宇野哲人論語新釈』にアクセスが集中していた。