ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

何を求めてのキャリアなのか

話は突然変わりますが、同年代のある日本女性の生き方について、小さな私見を書いてみたいと思います。

国立大学の修士課程を修了し、長い間、税金で教育を受ける機会に恵まれた者として、本来、もっと社会に出て貢献すべきなのに、家にばかりいていいのかなあ、申し訳ないなあと感じることも多くあります。
その一方で、例えば先週末から今週にかけてのように、学会発表やら講座出席やら東京滞在などが続く期間には、口では「いいよ」と快く送り出してくれる主人にも、直接間接的に迷惑がかかっていることがわかるので、外出よりまずは家庭の安定を第一に、と思い直したりもします。特に、主人の場合は健康問題を抱えているので、通常の人とは負担のかかり具合が違うのです。その面の配慮は、いったい誰がすべきなのか、と言えば、もちろん、暮らしを共にしている配偶者の役割でしょう。履歴書に書けない部分ではありますが、先日も書いた「コモ料理」を作るなどしてこれ以上病気を増やさないよう心掛け、家事をこなし、家庭内外の連絡や金銭管理をきっちり整頓しておくという仕事は、私にとって大事な役目だと思っています。夜も、私が家にいるのといないのとでは、主人にとって、安心感や精神的余裕の点で、ずいぶん違うようです。そういうことが健康状態の安定に結び付くのであれば、無理に外で働く必要はないどころか、むしろ家で落ち着いた暮らしを営むべきなのだろうと思います。

もともとキャリア志向のタイプではない私は、当然のことながら与えられれば仕事を責任を持ってきちんとする覚悟でいますが、人と競争するのが昔から嫌いな性分ということもあり、自分のテーマを持ちながら勉強を続けることが単純に大好きで、内外の事情に関して好奇心旺盛なだけです。キャリアプランニングはできるだけ早い方がいい、と急き立てるようなアドバイスをする人もいますけれども、私だって学生時代はいつでもたくさん新聞や本を読み、人の話を真剣に聞き、助言を求めたりして、まじめに考えていたのです。ただ、人生はこちらがプランニングした通り、努力した結果がそのまま反映されるというほど単純なものではないということです。

昨日たまたま、ある新聞からとった大きな記事の切り抜きを見ていて、(どうしてこの女性は、仕事も子どもも年収何千万円も資格も...)と言い切れるのだろうか、と疑問に思い、インターネットで調べてみました。その方は、ちょうど妹と同じ年齢なのですが、難関だといわれる国家試験に最年少で合格し、三人いる娘さんの一番上は、既に高校生だそうです。この方の著作をしばらく前に本屋さんで立ち読みした時には、資格の多さと生き方のテンポの速さに眩暈がしそうになりました。10年で年収10倍だとか、英語の資格試験も何年で点数2倍だとか、数値的指標だけで書かれているので、2005年8月に主人と訪れた元留学先のMITのCO・OPで「キャリアプランニング用のノート」を見て、血流が逆行し身のすくむ思いがしたのと同じ感触を持ちました(参照:2007年11月6日付「ユーリの部屋」)。

三十代の女性で年収が数千万円というのも驚きますが、今は博士課程にも在籍中なのだそうです。難しい年頃の娘さん三人を抱えて、どうしてそのような暮らしができるのだろうか、うちの妹なんて、私が電話をかけるたびに、いつでも息子(つまり私の甥っ子)が寝起きの悪さからむずかって大変そうなのに、と信じられない気持ちでした。

でも、調べてみてどこか納得したんです。ご自身が公開されているので差支えないかと思いますが、結婚2回出産3回離婚2回転職3回という忙しい経歴なのだそうです。また、お子さんへの感謝はあっても、パートナーのことを「ダンナ」と呼ぶなど、ややつれないところがあり、根本的に私とは違うタイプなんだなあと思いました。

昔、桐島洋子さんの自叙伝風エッセイを読んでいた時、想像するだけなら一見うらやましい人生だけれど、私には到底ご免だわ、と感じたのと同じです。普通の女性には不可能な人生だからこその付加価値に過ぎず、万人に対して共感をもたらす普遍性に欠けるからなのです。ご本人は未婚のまま産んだ三人のお子さん達のことを上手に表現されていましたが、それも収入に結び付けるための演出だったと知ったのは、つい最近のことです。一番上のかれんさんがテレビで「私は不安定な家庭に育ったので、自分は家庭を大事にしたいと思った」などと発言されているのを聞き、(やっぱりな)と思いました。真ん中の娘さんと末の息子さんは、確か離婚経験者だったように、どこかで読みました。

カール・ヒルティが書いていました。「離婚は、あるケースではやむを得ないこともある。しかし、後の再婚を期待して離婚するのはおかしい」と。そういう人は、真の意味では幸福になれないのだそうです。また、「外面的条件からの結婚もよくない」と(カール・ヒルティ)/草間平作・大和邦太郎)『眠られぬ夜のために 第二部岩波文庫 pp.98-100)。ヒルティの『幸福論』も、『眠られぬ夜のために』と共に、やはり名著だと思います。