ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

トランプ大統領・中国・沖縄

櫻井よしこ氏に関する過去ブログのリストはこちらを(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=yoshiko-sakurai.jp)。

https://yoshiko-sakurai.jp/2018/08/30/7594


2018.8.30
「中国の軍事膨張で正念場の日本」
週刊新潮』 2018年8月30日号
日本ルネッサンス 第816回


・8月16日、米国防総省は、中国の軍事・安全保障の動向に関する年次報告書を公表した。
・重要なのは国防総省国家安全保障会議(NSC)の考え方と、トランプ大統領自身の考え方がどこで重なり、どこで離れていくのかを知っておくことである。米軍の最高司令官は、無論、大統領だ。議会の承認も必要だが、大統領は殆んどの重要事項を独自に決めてしまえるほどの強い権限を有している。
・トランプ氏は閣僚や補佐官に依存しない。大事なことでも相談さえしない。独自に決断してしまいがちだ。・中国は21世紀最初の20年間を「戦略的好機」の期間ととらえ、世界制覇を実現するために多層的な攻略をしかけているが、その長期戦略から目を逸らすなと警告しているのである。
中国は米国にも世界にも「騙し騙し」の手法でやってくる。弱小国に圧力をかけるにしても、米国との衝突には至らないようにその直前で攻略を止めて様子を見る。中国が世界規模で行っていることを見れば侵略や覇権の意図は明らかなのだが、そこを突かれる直前に、「一帯一路」に代表される経済に重点を置いたかのような政策を打ち出すことで、対中警戒心を緩めさせる。その背後で再び侵略を進める。
・この繰り返しが中国の基本行動型であることを、年次報告書は明記している。圧力、脅迫、甘言、経済支援の罠などを駆使して自らの望むものを奪うその戦略を、習近平政権は「中国の夢」、「偉大なる中華民族の復興」などという美しい言葉で宣伝してきた。「ウィンウィンの関係」「人類運命共同体などと謳いながら、習氏は中国人民解放軍(PLA)を世界最強の軍隊にするために組織改革を含む中国軍立て直し計画を断行してきた。
・上陸作戦を担う中国海軍陸戦隊(海兵隊)は現在2個旅団で約1万人だが、これを2020年までに7個旅団、約3万人以上にまで拡大させるというのだ。
・年次報告書には台湾と尖閣を巡る危機も詳述された。たとえば尖閣諸島周辺の日本領海に、中国船は4隻が一団となって、平均すると10日に1回の頻度で侵入、などと詳しい。
・中国軍機による接近は急増しており、航空自衛隊の緊急発進も増え続けている。昨年度の実績で全体の約55%が中国軍機に対するものだ。PLAの爆撃機はいまや沖縄本島宮古島の間をわが物顔に往復する。空自の緊急発進はこれまで2機態勢で行われていたが、現在は4機態勢、まさに尖閣周辺は緊迫の海だ。
・あとわずか2年、東京五輪までに中国海兵隊は3倍になる。
・ギラギラした目で尖閣も台湾も狙う習政権の戦略に対して日本版海兵隊、水陸機動団は今年3月に2100人態勢で発足したばかりだ。五輪後の21年頃には3000人に拡充予定だが、中国陸戦隊の3万人には到底見合わないだろう。
日本に危機感が溢れているわけでもない。日米同盟が抑止力となり、中国を思いとどまらせることができるとの考えが根強いせいか。現在の日米安保体制の緊密かつ良好な関係ゆえに、一朝有事には米軍も日本を大いに扶(たす)けてくれるに違いないと考える人々が多いせいだろうか。しかし真に重要なのはトランプ氏の考え方なのである。
・ロシアのプーチン大統領は敵ではなく競争相手だと言い、北大西洋条約機構NATO)諸国を悪し様に非難するトランプ氏は、そもそも同盟関係をどう考えているのか。
・トランプ氏は6月の先進7か国首脳会議(G7)で、カナダのトルドー首相を痛罵し、共同声明に署名しないと宣言した。前代未聞のことだった。NATO首脳会議が同様の失敗に終わることだけは避けようと、ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官NATO各国と緊急に話し合った
・柱は「4つの30構想」とした。「30機械化大隊、30飛行群、戦闘艦30隻が30日以内に反撃開始可能」な軍事力を20年までに完成させるため、全加盟国が具体的目標を設定し、直ちに取りかかると合意した。
・世界全体がどの方向に行くのか定かでない地平に立っていることに変わりはない。この間、中国の世界制覇の野望は不変である。わが国はこれまでに見たこともない速度と規模で国防能力を高めなければならないのである

(部分抜粋引用終)

https://yoshiko-sakurai.jp/2018/09/01/7610


2018.9.1
「沖縄基地問題を巡る壮大な矛盾の構図 『不都合な真実』の予見は説得力がある」
週刊ダイヤモンド』 2018年9月1日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1245


沖縄県が熱い政治の渦の中にある。翁長雄志知事の死去で、知事選挙が9月30日に繰り上がった。氏の後継者として小沢一郎氏の同志で、自由党幹事長の玉城デニー氏が出馬する可能性が濃厚だ。自民・公明の候補者は普天間飛行場を擁する宜野湾市の前市長、佐喜眞淳氏である。
・「琉球新報」「沖縄タイムス」は、翁長氏が辺野古の海を守るべく本土政府と鋭く対立し、命懸けで闘ったと熱く報じ、知事選挙を氏の遺志を継ぐ弔い合戦だと印象づける。2紙は沖縄県人が一致して「オール沖縄」で本土政府と闘うという形づくりに懸命である。
・翁長氏はかつての自民党県連幹事長で、普天間飛行場の県内移設を容認していた。その保守の政治家が共産党主導の革新勢力と手を結んだために保革両勢力が結集したかのような印象を与えたが、真実はどうか。翁長氏はなぜ突如、辺野古移設に反対し始めたのか。
本土側の思い込みで理解しようとすると、必ず間違う。ではどうしたら沖縄を理解できるのか。
田久保忠衛氏は沖縄返還の前、時事通信那覇支局長だった。氏は沖縄理解の基本として「沖縄学の父」とも言われる伊波普猷(いはふゆう)を読むことだと語る。沖縄・久米島にゆかりのある佐藤優氏も伊波の『おもろさうし』を読み通したと、どこかに書いていた。ちなみに伊波は誰も研究する人のいなかった時代から琉球の万葉、「おもろ」を研究し『おもろさうし』をまとめた。
・伊波の膨大な著作に加えて、手軽な新潮新書『沖縄の不都合な真実』(大久保潤、篠原章著)を読めば、かなり沖縄のことがわかる。
・両者に通底するのは沖縄へのあたたかな想いと、沖縄の暗部への深い斬り込みである。
・『不都合な真実』は、誰も反論しにくい「沖縄の被害者の立場」を前面に出した「沖縄民族主義」を冷静に批判し、補助金依存型経済と公務員優位の社会構造にメスを入れない限り、基地縮小は進まないと断ずる。
〈日支両国に従属した歴史の中で沖縄人は二股膏薬主義を取らざるを得ず、生きるために友も師も、場合によっては国も売るという性質を育んだ〉
弱者の立場ゆえに、生存のためにはどっちにも転ぶというのだ。
・4年前の知事選挙の得票率は、翁長氏ら辺野古移設反対派が52.7%、容認派が47.4%だった。実態は「オール沖縄」ではなく「沖縄二分」なのだ。
・『不都合な真実』は翁長氏の突然の変心は「カネと権力」を巡る覇権争いゆえだと分析し、本土の私たちのように、翁長氏変心の原因を辺野古移設を巡る立場の違いに求めるのは「まったく的外れ」だと斬って捨てる。
沖縄問題は難しい。基地縮小の施策はおよそいつも現地の反対で妨げられる。同時に、基地負担の見返りに膨大な額の補助金が要求され、政府が応じる。
表面的な考察でのみ沖縄問題を論ずると間違うのである

(部分抜粋引用終)