ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

アラブから学ぶ日本(1)

アラブの陰謀論は根深い(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%B1%A2%CB%C5%CF%C0)。ダニエル・パイプス先生のご著書の趣旨は、今も生きている(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120524)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120612)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170403)。
手っ取り早くは、こちらの拙訳リストをどうぞ(http://ja.danielpipes.org/art/cat/4)。
だが、待てよ。今の日本の皇族を巡るネット上のコメント欄には、似たような精神構造の人々が増えていないか?

メムリ』(http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP705417


緊急報告シリーズ   Special Dispatch Series No 7054 Aug/22/2017

「アラブの陰謀論信仰が内部改革を妨げている―ヨルダン紙コラムニストの主張―」


ヨルダン紙Al-Dustourコラムニストのアル・マッジャリ(’Abd Al-Hamid Al-Majjali)が、2017年7月17日付紙面で、アラブは世界のどの人民よりも陰謀論を信じる傾向がある、と主張した。西側がアラブ諸国に介入し、災厄をもたらしたことを考えれば、この陰謀論に傾くのは、やむを得ない点はあるとしながらも、例えばアラブの春など今日アラブ世界で起きている事象をすべて陰謀論で解釈するのは、非論理的であると書いた。そして、このような陰謀論に依存するのは、改革、革新努力を妨げ、アラブを駄目にしている、と主張した。次に紹介するのは、その記事内容である※1。


アラブは、世界のどの人民よりも陰謀論を信じ、政治、社会その他の分野の事象を、これで解釈する。このような陰謀論に頼れば、考える努力をしなくて済む。論理を棄てて、出来合いの話でこと足れりとするのである。
歴史は、(本物の)陰謀で一杯である。アラブ人がほかの人民より陰謀論に頼ってしまうのは、他者即ち西側のアラブ地域との関係史が背景にある。西側の野蛮な過去と関係がある。この野蛮は、今日においては、我々の地域に対する穏な介入という形をとり、人道の原則というまやかしの標語がつくが、我々の災難のもとである。その影響は今でも残っているし、今後も残り続けるであろう…。
これが、陰謀論へ傾斜するアラブ人の思考を正当化するとはいえ、すべての事象を西側の陰謀策定室で決められた計画の結果、としてしまうのは、非現実的であり、非論理的である…変革のための本当の論理を無視し、すべてを他者のせいにして非難するばかり。これでは、事象を客観的に分析できないから、内部変革ができなくなる。
陰謀論は、我々アラブ世界のほぼすべての領域に拡散している。そして、陰謀論を信じる人々が、すべての出来事をこれで片付けてしまう。その説明を聞くと、論理性や常識の世界では嘲りの対象にしかならない。失笑してしまうのである。
陰謀論の信者達は、アラブ人民が暴政に対して立上る力があることを、一蹴する…彼等によると、例えばアラブの春は、外国の陰謀で外部勢力がアラブ人民を操作して反乱を起させたという話になる。西側の情報機関が、チュニジア南部諸都のひとつを選び、そこで警察署をひとつ選び、特定の警察官達を配置し、ひとりの物売りブアジジ(Muhammad Bouajiji)をターゲットにする※2。そしてその後人民を煽動し、警察の弾圧行為に対しデモを組織し、それを全土に拡大し、ビンアリ政権打倒に人民を蜂起させたという筋書になる。一体誰がこのような話を信じようか。シリアの内戦についても然りである。西側の情報機関がシリアのデラという町を選び、人家の一軒に入って、子供達を(衛星放送で政権打倒を叫ぶ大衆の姿を数週間見させて)、外出させこのスローガンを壁に落書きさせたとなる。シリアの政権は愚かで抑圧的であったから、子供とその家族に苛烈な手段を以て対応し、犯罪行為に走ったのである。これがシリア革命の種になったのだ。シリア政権があの時賢明な対応をとっていれば、何も起きなかったであろう…。
IS(イスラム国)の存在さえ疑う者がいる。いろいろな事件をひき起し、今でも起しているのにである。モスールのIS戦士は何処へ消えた、そもそも最初からいないのではないか、という。本気でこのような質問をする。彼等は戦死し、地下に埋もれているだけの話である。テレビに出ることはなく埋もれているのである。何千何万と戦死したイラク兵の死体を見た人がいるだろうか。戦時中軍は、自軍の戦士兵を展示するようなことはしない。先週シナイで複数のエジプト兵が殺害されたが、我々がその死体を見たであろうか。
全くのナンセンスである。これは陰謀論の証例のひとつである。正確な事実を認めることを妨げ 、自明の理であるようなことすら、論理的に考えることをできなくする。確かに、人民蜂起が外国勢力によって妨害されたことはある。リストに入り切れにない程多数ある。しかし、その蜂起を実行したのは、アラブ人民自身なのである。背後から操作されたのではない…外部の要素も加わって、オリジナルなコースから外れはしたが、これは自発的な革命であった。
陰謀論が、科学的客観的思考にさらされるには、少なくともアラブ地域では長い時間がかかる。この陰謀論は、今尚アラブの集団の心に住みつき、論理性を追いだしている…これは我々が抱える沢山な災難のひとつにすぎないのである。


※1 Al-Dustour(ヨルダン)、2017年7月17日付。
※2 ブアジジは、当局が物品を没収した後、2010年12月17日自分に油をかけ焼身自殺を遂げた、チュニジアの街頭物売り。この事故に触発されてチュニジアで革命が起き、アラブの春の発端となった。

(引用終)