ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

欧米はどこへ向かうのか?

今回の欧州の旅で、旅団メンバーから聞いた話とその意味の深刻さを、繰り返し反芻している。
お父様がハーヴァード大学のロシア史の教授で世界的に名を挙げ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/archive?word=%A5%EA%A5%C1%A5%E3%A1%BC%A5%C9%A1%A6%A5%D1%A5%A4%A5%D7%A5%B9)、その薫陶を真っ直ぐに受けてハーヴァード一筋で教育を受け、博士号も授与されているダニエル・パイプス先生が(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/archive?word=%22Daniel+Pipes%22)、あれほど知的で学究肌そのもので、研究精神と行動力や発言力に富み、説得力に溢れる論理的な文章もうまく大量に書けるのに、なぜ小さな民間レベルのシンクタンクを立ち上げて、孤軍奮闘の年月を過ごしてきたのか。それは、彼の人となりや手法のまずさに起因するものなのか(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150805)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150817)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151020)。東洋の翻訳者として訳文の依頼を受けた以上は、常に気になることである...。
ベルリンで宿泊したブランデンブルク門に近いホテルの隣にあったカフェ・レストランで、深い闇に向かって暮れなずむ時空に包まれながら、この旅を機縁に親しくなった女性二人と夕食を共にした時、ふと私の投げかけた問いだった。
即座に「そのことなら、私が説明するわ」と、9.11以降、イスラーム問題に目覚め、中東フォーラムに寄付金を送り続けてきたという東海岸在住の女性が答えた。彼女とは、実は2014年4月10日の中東フォーラム二十周年記念の時にもお会いしている(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140510)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140624)。
「あのような政治観を持つと、米国では大学に就職できないの」。
もう一人が、言い添えた。ご主人は有名大学の医学部教授であるという。「理系なら問題ないんだけど、文系はねぇ....。それとね、あれが反ユダヤ主義なのよ。でも、彼は正しい」。
場所がドイツだったから、余計に身に応えた。クラシック音楽のこともあって、私は言語的にドイツ語が好きで、学生時代はペンパルとドイツ語で文通をしていたぐらいだから(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070730)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071223)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20140508)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150220)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151220)、三度目のドイツ訪問で、久しぶりにドイツ語が話せるだろうと、楽しみにしていたのだった。だが、「反ユダヤ主義」と言った女性は、食後、腹ごなしにホテル周辺を10分ほどお散歩しないか、と誘った私に対して、「私、ベルリンの街を歩きたくはないわ。今でも、ナチ時代を彷彿とさせるから」。
確かに、フランスでもドイツでも、そこで生まれ育ち、フランス語とドイツ語で暮らしてきた複数のユダヤ系の講演者や招待者(文筆で生計を立ててきた知識階級)が、「もう、欧州に希望はない」とばかりに不満を募らせ、中には涙ぐみながら、現在は1930年代の再現か、と不安を語っていた。既に他国への移住を実行し始めている人もいた。驚いたことに、フランスのシナゴーグやラジオ番組でパイプス先生と討論をしていたギュイ先生も(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130323)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150124)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160726)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20130823)、博士号を三つもお持ちなのに、「フランスが嫌になり、今ではアメリカ合衆国で暮らしている。二ヶ月前のことだ」。もう一人は、娘さんのことがあるので、躊躇しつつもイスラエルへの移住を準備しているとのことだったし、別の一人は、頻繁にニューヨークへ来ては、合衆国での生活地盤を固めつつあるようだという。
これが、我々が先進国だと見上げ、熱心に学び吸収してきた欧州の成れの果てなのだ。
もう一点、明記すべきことがある。時節柄、旅団メンバーの顔ぶれから、アメリカ大統領選挙の話がチラホラ出たが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160508)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160723)、英国、オーストラリア、カナダの出身者、そして日本の私は、有権者でも当事者でもないという理由を表に出して、旅程中のグループ団結力を削がないためにも、極力遠ざかっていた。唯一、日本の立場として、「がっかりしている」「トランプ氏は、その発言によって両国間の政治記録を壊してしまった」「クリントン氏が大統領だった時、日本に冷たくて、ジャパン・バッシング、ジャパン・パッシングだったから(http://d.hatena.ne.jp/itunalily2/20140209)、クリントン夫人が大統領になるのは怖い」とのみ、個人会話の中で機会があった際、意見表明をしておいた。
だが、私自身、これほどまでにアメリカ合衆国の国力が低下したことには、同盟国の一員として、尋常ならざるものを痛感している。結局のところ、大きく三つの原因が考えられよう。
(1)イラク戦争の見通しの甘さと戦後処理の政治判断ミス
(2)離婚率が50%に達した結果、家庭基盤の弱体化と子ども達に及ぼす心理的悪影響が、社会の不安定感や分断化や極端な志向へと結びついていること
(3)移民政策(ムスリム・ヒスパニック・アジア・アフリカ系など)
日本にとって、いずれも対岸の火事ではない。真剣に受け留め、対処法を講じておくべきであろう。