ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

Elliott Abrams氏の公開講演

昨日の午後、同志社大学で、アメリカのCFR中東研究担当シニア・フェローのElliott Abrams氏の公開講演を聴いた。
初めて中に入った新しくできた建物だが、地下鉄の駅とも通路がつながっていて、今の学生さん達は、私などとは大学に対する意識そのものが全く違うのだろうと感じた。
学生や一般市民など、大勢の人々が集まっていた。話題が注目の「2016 米国大統領選挙と米国内政・外交の展望」(2016 Presidential Election and the Future of U.S.Domestic & Foreign Policy)だったことの反映でもあるが、一方で、私が知る十年以上前とは雰囲気が異なっていて(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160716)、私にとっては大幅に改善されて良くなり、ようやく考え方が概ね同意できる方向性へと変化したことも挙げられるかと思った。
まず、人選がいい。というのは、このElliott Abrams氏も、ダニエル・パイプス先生の学生時代からの友人である(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130828)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150821)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151119)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160718)。

http://www.danielpipes.org/blog/2010/02/further-reactions-to-my-bomb-iran-argument


Feb 15, 2010... Elliott Abrams of the Council on Foreign Relations (and my friend from college days)

そのこともあって、一緒に仕事をされてきた(http://www.danielpipes.org/6339/elliott-abrams-religious-freedom)上、今でも時々、著述に引用されることがある。

http://www.danielpipes.org/blog/2005/02/my-optimism-about-ending-the-syrian


Feb 22, 2005... The report, signed by such future Bush administration figures as Elliott Abrams, Paula Dobriansky, Douglas Feith, Michael Rubin, and David Wurmser (as well as Eliot Engel and Richard Perle),….


http://www.danielpipes.org/blog/2005/04/sharons-gaza-withdrawal-made-in-washington


Aug. 17, 2005 update: The account begins in Rome on November 17, 2003, when Ariel Sharon met Elliott Abrams, the National Security Council official in charge of the Middle East portfolio, sent by his boss, National Security Adviser Condoleezza Rice.


http://www.danielpipes.org/10427/iran-obama-reelection


Dec 20, 2011 ... his incentive to bomb Iran has substantially increased, a point publicly discussed by a colorful range of figures, both American (Sarah Palin, Pat Buchanan, Dick Cheney, Ron Paul, Elliott Abrams, George Friedman, David Broder, Donald Trump) and not (Mahmoud Ahmadinejad, Fidel Castro).


http://www.danielpipes.org/16625/does-israel-need-us-jewish-support


Apr 18, 2016 ... Elliott Abrams began a conversation by asking what has caused American Jews to distance themselves from Israel and finding the main cause to be the 50-to-60 percent rate of Jewish intermarriage with non-Jews.
(この邦訳はこちらを(http://ja.danielpipes.org/article/16703)。)

また、主催者が国際交流基金で、私のマレーシアとの関わりも、この基金派遣がきっかけだったからだ。(だから、個人レベルでマレーシアを選択して研究者になった人達とは、最初から動機も背景も異なるのはごく自然だったのに、なぜか一緒くたにされて、変な方向に勝手に同類化されてしまったのが、十年以上も前の話だ。混乱して疲労したのも、宜なるかな...。)

相変わらずスカーフ姿の女子学生が二三人いたが、こういう講演会の内容について、どのように考えているのだろうか。内面でレジスタンスのような感情を抱いている、ということはないのだろうか。(彼女達を見ていると、昔を思い出して複雑な気分になる。私の方が十数年も先に生のイスラーム実践に触れていたのに、後からイスラームに改宗した女子学生の方が、私のイスラーム理解度を高見から「わかっていませんね」と論評している風情だった(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20141011)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160118)。まさに、あべこべの世界であった。)

Elliott Abrams氏は思ったよりも小柄に見えたが、始終笑顔で、明るく雄弁な(ゆっくりとした)語り口だった。だが、全体として曖昧な話であって、現行と将来の諸問題を巡る中心点について触れることを注意深く避けていらっしゃると、私は思った。
お話は、1990年のイラククウェート侵攻で始まった。当時、私はマレーシアに滞在していたので、一種独特だったあの雰囲気を今でもよく覚えているが、同時に、フィラデルフィア外交政策研究所の所長だった若き(?)パイプス先生の印象的な映像画面を思い出した(http://www.c-span.org/video/?15414-1/occupation-liberation-persian-gulf)。
この映像の最後の方の質疑応答で、ジョージタウン大学のイブラヒムという先生の「リンケージ」理論への言及が、最も忘れ難い。「イラククウェートに侵攻することはネガティブで、イスラエルパレスチナに侵攻することはポジティブだ。それは何故なのか?この会合の目的は何なのか?」という、ムスリムならではの問いだったが、所属名ですぐに察したらしいパイプス所長は、即座に問いを厳しく遮断し、「質問は何ですか。時間は限られているのです。ここは自説を展開する場ではありません。もっと簡潔に質問をまとめてください。」と小声で何度も威嚇されていた。会場からひそひそ笑いを誘ったのは言うまでもない。
だが、今から考えると、イスラエルパレスチナに侵攻などしていない(国防としての応酬と入植地の問題を、独立国家としてのクウェートへのイラク侵攻と混同している)のだから、パイプス所長が笑われる筋合いはない。でも、あの頃、優勢だった一般メディアの論調は、特に日本国内で、イブラヒム氏に加担するものではなかったか?

話を講演に戻すと、トランプ氏の日本に関するコメントは、ディスカッサントの村田先生がおっしゃったように、現代の日本人の態度の単なる映し鏡ではないか、と私も思う。過去70年間、米軍の保護下で長らく甘やかされ、耽溺してきたのだ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20160718)。私見では、トランプ氏は我々にとっての深刻な警鐘であると思う。

Abrams氏は、これからも世界でアメリカ合衆国がナンバー1であると考えることに自信を持っていらした。私もそのように希望するが、これは、歴史において時に破壊的な結果へと導いた、世界観を巡る究極的なユダヤ人の楽観主義の一つだとも、私は受けとめた。