ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

アラブ情勢について

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緊急報告シリーズ


Special Dispatch Series No 5076 Dec/9/2012


「アラブ人は何故事実よりウソを好むのか―イスラエル系アラブ人著述家の陰謀論批判―」



アラブ系イスラエル人著述家マサルハ(Dr.Salman Masalha)が、「アラブは何故事実より嘘を好むのか」と題する記事で、アラブメディアを批判した。読者に本当の事実を知らせず、陰謀論や馬鹿げた作り話をひろめていると非難している。次に紹介するのは、2012年11月26日付Elaph.comに掲載されたその記事内容である※1。


数年前いくつかのアラブメディアが奇怪なイスラエル陰謀説を流した。誰でもはっきり記憶しているに違いない。モサッドが鮫を訓練して、シナイの観光客を襲わせているという馬鹿げた話で、アラブ各紙は「繰り返し(鮫に)襲われて、南シナイ当局が遂に沈黙を破った。知事が、鮫はイスラエルのモサッドの命令で環境客を襲っていると発表した」と報じたのである。カイロの観光局も、(鮫の襲撃は)エジプトの観光産業に打撃を与えようとするイスラエルの陰謀の一端、と発表している。



それより前には、エジプトのメディアが血沸き肉躍るニュースを伝えた。こちらもモサッドの陰謀話だが、エジプトの市場に潜入したモサッドが、女性の性欲亢進剤を多量に(食材に)混入しているという話。エジプトの家族制度を破壊しエジプトの社会基盤に打撃を与えるのが目的という。この話に関連して指摘しておきたいのが、定期的に出されるインターネット統計である。この統計によると、アラブ人の検索で一番多いのは“セックス”とその派生用語で、この点では世界一という。つまり、アラブ人はセックスに関連したものに大いなる妄想を抱いているのである。一種の強迫観念があることを、統計は示している。


このアラブの傾向は、社会学と心理学の専門家による調査対象になって然るべき問題である。残念ながら、私には解明するに必要な学問的手段がない。私にできるのは、アラブ世界をむしばむ慢性病の指摘だけである。この慢性病を反映するファトワ(宗教法)もいくつかある。例えば、死体との性交を許すファトワが最近出されている。この種ファトワは、アラブ人非アラブ人、東及び西側に知れ渡っているから、この死体姦症についてこれ以上言う必要もないだろう


このような話をだしたのは、最近もアラブメディアに新しい作り話が報道されたので、放っておけないと考えたからである。今回の作り話は、重量級のセックス陰謀である。例によって今度の主人公もモサッドだが、女性の主人公も初登場する。その名はツィピ・リブニ。イスラエルの前外相である。エジプト紙Al-Masri Al-Yawmが、2009年のリブニインタビュー(ロンドン・タイムズ、イスラエルのエディオト・アハロノット紙で報道された)にもとづくと称する話、として掲載したのだが、このエジプト紙は、リブニが政治的に脅迫するため複数のアラブ人有名者と寝たことを明らかにした、と報じた。この記事のタイトルは、「彼女はアラブ人達と寝たー交換条件は政治的譲歩」である。


アラブ人は一般的に言って陰謀論にはまっている。特にセックスがらみの陰謀を妄想する。リブニ云々の作り話はアラブメディアに野火のように広がった。新聞雑誌だけでなく、ウェブサイトでも根拠確かな赤裸々な話として扱われた。それだけではない。アラブのジャーナリスト、アナリストそして知識人達がこの“問題”をとりあげ、討論やら分析やらを大真面目で始めたのである。


この専門家達はだれひとりとして―このウェブサイト(Elaph)の執筆者達を含めて―オリジナルの記事の信憑性を調べようとしなった。例えばこのウェブサイトの執筆者のひとりジャラビ(Khales Jalabi)は、「彼女はイスラエルのために性交殺害する」と題する記事を書いた。この分野の天才カリム(Najm 'Abd Al-Karim)と、どっこいどっこいの話である。彼の記事は、このウェブサイトで別の執筆者に引用された。曰く「アブダルカリムの報告によると、シオニストのツィピ―ハガナギャング団の親分の娘である―が自分の体を提供する用意があることを認めた。体を売ることがシオニスト大義に役立つならば、そうする。事実彼女は一切恥じることなくそうした」とある。ジャビラはこの記事を「シオニストのガン―社会・生物学的研究対象」と呼んだ。研究対象になるのは自分の方である。


アラブの報道と多くのアラブ人ジャーナリストにとって、事実は大して重要ではない。関心もないようである。彼等は、ウソのニュースと報道がアラブのメンタリティに合致すれば、内容のチェックは必要ないと信じている。アラブの読者はこの種の話を証明済みの事実としてそのまま受入れるからである。


このジャーナリスチックなアラブの奔馬が走りだすと、後は一瀉千里。またたく間にアラブ世界全域にひろがる。このセックス陰謀論は(読者の)感情を心地よく刺激した。この感情はこのような作り話をいつでも受入れる下地になっている。さて、この後Al-Masri Al-Yawm紙が、チェックしないで報道したとして、読者に(わざわざ)謝罪した。同紙のウェブサイトに掲載された謝罪文は「この一連の話は、(ロンドン)タイムズとエディオット・アハロノットに掲載されておらず、信用のおけない情報元の捏造をコピーしたもので、そのコピーがポピュラーなアラブのサイトに転載されたことが、明らかになった」と釈明して謝った。



さて、著述家達による謝罪はどうなったのであろう…、ジャーナリスト、アナリスト、思想家等々は作り話を書いてひろめた責任をとって、読者に謝罪すべきである…ウソをつきまぜて作話し、それを事実としてひろめた者は、現代アラブの悲劇の不可分の一部である。彼等は、まわりの流動する世界の現実と取組むことを要しない、のどかな(事態)を好む。彼等の心を支配しているのはファンタジーブギーマン(魔力を持つおばけ)である。彼等は、追い払うことができないのである。プロフェショナルなジャーナリズムを尊重する時がきている。特にアラブの読者は、状況の然らしめるところにより、世界のどこよりも本当の事実、潤色しない事実を知る必要があるのである…」。


※1 2012年11月26日付Elaph.com

緊急報告シリーズ


Special Dispatch Series No 5086 Dec/19/2012

我々は全パレスチナを解放する―武力闘争を呼号するハマス指導者―


ガザに来たハマス指導者のマシァル(Khaled Mashal)が演説し、2012年12月7日にアルアクサTVで放映された。次に紹介するのはその演説内容である。


川から海まで寸土も放棄しない


第一に、パレスチナは、(ヨルダン)川から(地中)海まで、北から南まで全部が我々の土地、我々の権利、我々の郷土である。寸土といえども1インチといえども手放すことはない。


第二に、パレスチナは昔も今もそして将来も、アラブとイスラム世界に所属する。パレスチナは誰のものでもない。我々のものだ。


イスラエルの合法的存在を認めない


第三に、パレスチナは我々のものであり、アラビズムとイスラムの土地である。我々はイスラエルの合法的存在を認めてはならない。イスラエルの占領(存在)は非合法であり、つまりイスラエルそのものが非合法であり、未来永劫非合法の存在である。パレスチナは我々のもの、シオニストには所属しない。


第四に、パレスチナの全パレスチナの解放は、権利であり、任務であり、目的である。解放はパレスチナ人民の、アラブとイスラム共同体の責務である。


ジハードと武力闘争が正しい道


第五に、ジハードと武力闘争が解放の正しい道である。勿論、政治、外交、大衆行動そして法廷闘争などあらゆる形態の闘争と組合わさなければならない。しかし、武力抵抗がなければ、闘争は意味がない。


政治は、武力抵抗から生まれる。本当の政治家は銃とミサイルから生まれる。


アナウンサー、アッラーアクバル(アッラーは偉大なり)


歌 おおアブワリッドよ、おおマシァルよ 進むべき道の準備を、さあ進めよう。我等の旅路は完結しなければならぬ。アッラーはあなたと倶にある。


マシァル


アッラーの御加護を。


パレスチナの政治家よ、アラブとムスリムの政治家よ。ガザから教訓を学べ。外交の道をとりたいと願う者は、ミサイルを手にして外交をしなければならない。政治家よ。君達の力は武力抵抗の力に由来するのだ。



私は、同志のハニヤ(首相)、内外のハマス指導部、戦友、ガザとウェストバンクの抵抗の指導者と倶にある。我々はパレスチナ軍事部門指導部に多大の恩義を感じている。軍事部門に偉大な指揮官達がいなければ、政治家の存在意義はない。アッラーのおかげ、抵抗の英雄達のおかげである。

テルアヴィヴ攻撃は素晴しかった。あなた方の手に栄光あれ。その手に栄光あれ。あなた方がしたことに我々は誇りに思っている。



ジハードと武力抵抗が我々の進む道である。これは単なる言葉のレトリックではない。今までの経緯を見ると、ジハードと武力抵抗が最も有効で信頼できる選択肢である。この選択肢は幻想ではないし、蜃気楼でもない。武力抵抗は、はっきりと目に見える。具体性がある。地上を行進し、人々の間に光明をひろげ、敵に火の雨を降らすのだ。これが武力抵抗だ。



我々にとって、武力抵抗は手段であり、目的ではない。メディアを通して世界に向かって言おう。パレスチナエルサレムを取り戻し我々の帰還権を行使し、忌むべきシオニストの占領に終止符を打つ。これが我々の目的だ。この目的達成に武力抵抗と流血以外に有効な方法があるのか。あるのなら歓迎する。しかし我々は64年間この手段に機会を与え、何も得られなかった。これが武力抵抗を選んだ理由である。我々を咎めてはならない。別に方法が、戦争、戦闘にまきこまれなくてもよい方法があったのなら、とうの昔にそうしている。しかし、歴史とアッラーの法が、我々に教えている。勝利と解放は、武力抵抗、戦闘そして犠牲なくして、達成することはできないのだ。

エルサレムは我々の心、我々の歴史、我々の共有記憶である。エルサレムは我々の過去、現在そして未来であり、我々の永遠の都である。必ず解放する。イスラムキリスト教の聖地を一歩一歩奪還していく。イスラエルエルサレムに対する権利がない



1948年の境界内(イスラエル)も解放対象



帰還権とは難民全員の帰還を意味する。パレスチナの地一町や村、ガザとウェストバンクの周辺、1948年の境界内へ戻る権利だ。隅から隅まで我々のものだ。我々の父、祖父はここで生まれた。我々はここに住んでいた。我々の記憶と歴史が染みついている地である。我々にとって帰還権は神聖である。不可譲の権利である。見くびってはならない。



兄弟達と私が昨日ガザ入りをした時、我々は帰還権の行使を開始した。



ハマスは明確な原則を持っている。難民の再定着はノ―。代替ホームランドもノ―だ。パレスチナに代る地はない。

パレスチナの地は、ガザ、ウェストバンク、そして1948年の境界内の地だ。これがパレスチナの地。全部だ。隅から隅までだ。



一部たりとも分離はできない。ガザはウェストバンクから切り離しておけると考える者は、思い違いをしている。ガザ、ウェストバンクそして1948年境界内の土地は不可分であり、全域が大パレスチナの郷土である。

そうではないか、ハニヤ。



アナウンサー  アッラーアクバル
群集      アッラーアクバル
アナウンサー  アッラーアクバル
群集      アッラーアクバル
アナウンサー  アッラーアクバル
群集      アッラーアクバル


マシァル


ウェストバンクはガザから分離できない。ガザはウェストバンクから分離できない。二地域はハイファ、ヤッホー、ベエルシエバ…ツファットから分離できない。


男性 おおマシァル、我々の敬愛するマシァル
群集 おおマシァル、我々の敬愛するマシァル
男性 あなたの軍がテルアヴィヴを攻撃した
群集 〃
男性 〃
群集 〃
男性 おおカッサムよ、もう一度やれ
群集 〃
男性 今度はハイファを撃て
群集 〃
男性 今度はヤッファを撃て
群集 〃
マシァル アッラーの御心のままに
男性   アッラーアクバル
群集   アッラーアクバル


マシァル


よく聞いてくれ。各派の同志よ。国家の前に解放が先行する。本当の国家は解放の結果である、交渉では生まれない。


パレスチナ全域を領土とする主権国家こそ本当の自由パレスチナ国である。それに代るものはない。

緊急報告シリーズ


Special Dispatch Series No 5971 Dec/26/2012

シリア攻撃は米帝シオニスト・反動アラブの陰謀
パレスチナ・イスラル系アラブのシリア連帯人民委員会の主張


2012年初め、パレスチナ人とイスラエルのアラブ人達が、被占領地パレスチナ・シリア連帯人民委員会を設立した。シリアのアサド政権とその軍を支援する団体である。メンバーのなかにはイスラエルの有力アラブ人も含まれる。クネセット(イスラエル国会)のナファ(Sa'id Nafa')議員、マホウル('Issam Mahoul)前議員等が含まれる。最近この委員会が数回会合を開き、参加者達が、シリア打倒を意図しているとして、アメリカ、トルコ、シオニストそしていくつかのアラブ諸国を非難した。彼等の考えによると、シリアは抵抗枢軸を主導し、反動アラブ擁護をもくろむ西側の意図を粉砕しようとしている。アメリカが先にたってこのシリアを叩き潰そうとしているという。彼等はトルコとシオニストも非難する。トルコは、シリア攻撃を続けるテロ組織の支援国、シオニストアメリカとつるんでシリアを流血の惨におとしいれているという



委員会は、2012年10月下旬シリア軍を讃える会議をハイファで開催し、その閉会にあたって知識人70名が署名した声明を発表した。曰く、「シリアに対する、その大他、領土、国家に対する邪悪な攻撃は、この歴史的重大岐路にあたって日々エスカレートを続けている。シリアを暴力の渕に沈めようする反動アラブは、地域そして国際的に糾合して、シリア叩きに奔走している。シリアが汎アラブの抵抗支援を行なっているので、その報復をしているのである。また、彼等は、アラブ世界を支配しようとする帝国主義の野望に、奉仕している。その線に沿って行動している…我々は(シリア)情勢に無関心ではおられない。我々は声をあげなければならない。現在の生か死の闘争が未来の動向を決めるからである。国家は、如何に多くの犠牲をだそうとも、敵を壊滅しなければならない」。
この会議に参加したナファ議員は、閉会声明には二つのメッセージが含まれている、と次のように説明した。


「第一。教育のあるイスラエル系アラブ人が相当数シリアの(政権による)改革を支持し、シリアの敵に対して声をあげ、意志表示をしているのだ。第二。イスラエル系アラブ人はシリアを尊敬し、パレスチナ問題に対するシリアの姿勢を多としている」。



マホウル前議員も会議に参加し、「シリアで起きている事件は、政権のみならず国家を破壊しようとする国際陰謀とテロ攻撃の存在を証明している」と主張した。


コメンテーターのサバフ(Alif Al-Sabagh')は、シリアの敵が持てる力を動員してアラブ世界の分断、破砕に狂奔していると主張、「彼等はイラクを破砕した。今日同じことをシリアに対して行なっている。しかし我等アラブ人民とイスラムウンマ(共同体)は、アメリカが主導するアラブ世界破壊の犯罪計画に立向かう」と言った※1。


エルドアン武装テロ集団を支援している


2012年10月初旬、委員会がシリア連帯のデモを行なった。場所は、東エルサレムのトルコ領事館前である。デモ隊はシリアとパレスチナの旗を持ち、「シリアから手を引け」、「エルドアン首相くたばれ」と叫んで、気勢をあげた。彼等の主張によると、トルコの支援下で武装テロ集団がシリア内で人民を殺し、破壊活動を行ない。シリア人民の安全をおびやかしている。パレスチナ週刊誌Al-Bayadir Al-Siyyassiの編集長ハズモ(Jack Khajmo)は、「パレスチナ人民は、誇り高いシリア(の大地)の側に立ち、トルコの国内問題への介入に反対する」と主張した。“殉教者”の母と称せられるアシア(Jamila 'Asia)は、「我々は激怒している。我々はシリアの側につく。我々は挑戦する。我々の叫びは、「この国を潰そうとする陰謀、抵抗枢軸潰しを絶対に許さぬ意志の表明だ」と言った※2。



シリア内戦は民主主義を求める戦いではない


2012年3月ガリラヤ地方のアルラマ村で開催された会議には、数十名の活動家が参加した。そのほか、聖職者、社会の有力者、各派の政治家も出席している。議長役をつとめたのが、ハンナ('Atallah Hanna)大主教であった。2002年当時、ギリシア正教エルサレム管区のスポークスマンであったが、自爆攻撃を赦すと言って解任された人物で、「国際的侵略からシリアとその人民を守る」委員会の努力、を讃えた※3。ひとりの参加者は、「シリアで起きているのは、自由と民主々義を求める闘争ではない。シリアは、この地域とアラブ人民に敵意を抱くアメリカの野望に抵抗している。その抵抗を排除しようとしているのだ。(この)戦争はパレスチナ問題が根にある…彼等はシリアを打倒し抵抗(枢軸)の支援者としてのシリアの役割を弱めようとしている。シリアは、帝国主義シオニズム、アラブ反動主義の野望に反対する。シリアは抵抗陣営の主柱である」と言った※4。


委員会はエジプトも非難した。Nilesatのネットワークからシリアの国営テレビチャンネルを抹消したからである。「シリアのメディアは陰謀の嵐から人民と国を守る盾である。それを遮断するのは許せない。自由と民主々義を愛する世界の人民、メディア関係者は、これを不当として非難し、抗議し、アラブ共同体の名誉を守るシリア国営メディァを力づけなければならない…帝国主義シオニズムそしてアラブ反動主義の不浄な三位一体は、シリアに流血の惨をひき起す元凶であり、シリアの国家基盤を破壊し、国をこの不浄な三位一体の魔手に引き渡すべく、メディアを使ってシリア内戦を主導している。しかし、シリアの国営メディアは、その野望と欺瞞の裏をかいてきたのである」と説明した※5。



シリア支援のハイファ会議、2012年10月※6。



※1 2012年10月29日付SANA(シリア)
※2 2012年10月4日付SANA
※3 2012年10月28日付Kalam.com.il
※4 2012年10月28日付Kalam.com.il
※5 2012年9月7日付Alarab.net
※6 2012年10月29日付SANA

(引用終)