ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

福島原発被災の余波−イラン−

今朝の朝日新聞によれば、昨夜、イスラエル軍の医師団約50名が成田空港に到着し、宮城県栗原市を拠点に、南三陸町で活動するとのことです。さすがは、現場で日々鍛えられ、危機意識抜群で、高度なノウハウを有しているイスラエル。早速、最も困難な地に入ってくださいました。何だか少し、ほっとします。
恐らくは、ヘブライ語専門家が7,8人のみという日本外務省で、4月から勤務を再開される私の「先輩」も(ごめんなさい、いつも勝手ながら慣れ慣れしくて。参照:2011年3月1日・3月23日付「ユーリの部屋」)、ますますお忙しくなるのでしょう。もっとも、実際の交渉には、英語の方がよく使われるのかもしれないとは想像しますが....。
そこで、久しぶりに国際面に目を向けて、「メムリ」記事をどうぞ(http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP368411)。

緊急報告シリーズ
Special Dispatch Series No 3684 Mar/22/2011


「イラン側核施設の安全性を危惧する湾岸諸国―福島原発被災の余波―」


日本の福島原発被災をうけて、サウジ英字紙Arab Newsが2011年3月18日付紙面で、この問題をとりあげ、核、地質学及び環境の専門家達が、イランの核施設の安全性について、問題点を指摘した。以下その内容である※1。



イランの核施設も地震地帯にあるが、日本のような厳格な安全基準がない


サウジとクウェートの環境問題専門家が、イランのブシェール核施設の安全性に深刻な懸念を表明した。ここは、サウジ・クウェートの国境から湾をへだてて250キロほどのところにあるが、地震津波による損傷の結果、福島第1原発で起きた爆発で、イラン側施設の安全があらためて問われることになった。


イランの核施設は、日本の原子力発電所と同じように、地震地帯の上に立っている。ところが双方の間には大きい違いがある。日本の施設は、地震地帯における最高の建築基準とデザインでつくられているのに対し、イランはそのようなレベルにないので、安全性が益々問われるのである。 


2003年のバル地震では、建物が全部倒壊し、3万人が死亡した。1990年のマンジル地震の場合は、4万を越える死者がでた。


日本では、津波によって多数の住民が死亡したが、地震自体による死亡は極僅かである。クェート大科学部の地質学/環境学のアワディ教授(Jassem Al-Awadhi)によると、ブシェールの核施設で爆発が起きると「破滅的な結果をもたらす。チェルノブィルのような打撃を地域全体に与える」という。同教授によると、クウェート科学研究所地震学センターはブシェールが位置するイランの西岸域で地震の発生を毎日探知している。この地域に、アラビアプレート、アフリカプレートそしてユーラシアプレートの三つが存在するためである。ブシェールの核施設建設が、国際原子力機関IAEA)の建築基準に合致しているのかどうか、教授は知りたいと言った。


湾岸地域全域に被害が及ぶ危険性


湾岸は北西の風が吹くので、ブシェールの爆発で一番影響をうける、つまり一番危険なのがアブダビとドバイである。しかし放射能降下物は、サウジ東部省の諸都市や油田にも容易に到達するだろう。大量疎開が必要になってくる。バーレーンカタールも打撃をうける可能性がある。


リヤド・キングサウド大学の林学・環境学科のアレフ博士(Ibrahim Aref)は、もっと深刻な事態になる可能性があると主張する。博士によると、爆発で東部省だけでなく王国全体が影響をうける。1991年にクウェートで油田火災が発生した時、炭素成分が紅海東岸アシールまで飛んできた、と博士は指摘する。


1996年のチェルノブイル事故では、アイスランドまで放射能降下物で影響をうけている。


アレフ博士が心配するのは、サウジ王国でこの危険を認識している人が殆んどいないことである。真剣に考えている人になると、もっと少ないという。博士は「注意を喚起する必要がある」とし、「ブシェールで起きる可能性のある災害を、もっと考えなければならない。日本は対応手段がきちんとしているが、その日本が対処できなければ、対応手段に欠けるイランには何も期待できない」と指摘する。


不慮の事故に備えた計画が必要である。例えば、緊急事態用の防護マスク貯備、放射能モニター装置の全土配備がある。博士は、ブシェール施設が爆発した場合に備え、サウジアラビアを初め湾岸協力会議GCC)諸国が委員会を設置し、対応を検討すべきである、と提案している。東部省では、ブシェールの安全基準と潜在的危険性について、既に指摘されており、アルホバルの科学教師ハリディ(Abdul Aziz A .Al-Khalidi) は「ブシェールは地殻変動のみられるプレート上にあり、日本のようなことが起きれば、我々サウジ東部省とクウェートの人間は、放射能を帯びたウィンドブラストを最初にうけることになる」と指摘、「気象の専門家達はブシェールから我々の方へ風が吹くことを明らかにしているので、本当に心配である。深刻な問題になることが予想される。日本で起きている事態から、教訓を学ぶべきである」と言う。


サウジの国立人権協会々長カータニ(Moflih Al-Qahtani)も、地震で生じるブシェールの危険を想定し、対策を講じておくべきと述べ、「放射能漏れで死者がでるだろうし、高いガン発生率も考えられる」と主張する。サウジアラビアを初め湾岸協力会議諸国は、イランが主張していることに懸念を表明して然るべきである。必要なら、国連と国際原子力機関に問題提起をすべきである。


日本より高い安全基準と豪語するイラン大統領―専門家は疑問視


イランのアフマドネジャド大統領は、自国の原子炉は日本のものより安全とし、「最高の安全基準と規定が全部適用されている」とスペインのテレビTVEに語り、「日本のプラントは40年前に建てられた。つまり過去の安全基準だが、我方のは最新の安全基準である」と胸を張った。


実際のところはどうであろうか。ブシェールは1975年に着工された。工事を担当したのはドイツの企業だったが、革命のため中止され、更にイラン・イラク戦争イラクの爆撃でひどい損傷をうけた。今日工事の一部はロシアが受持っている。1995年にロシアが建設の引継ぎに合意したのである。しかし、ドイツとロシアの技術を融合させるのは容易なことではない。爾来25年、昨年8月に原子炉がやっと完工したが、まだ稼働していない。プラントの再建を担当するロシアのエネルギー企業ロストムが、四つある冷却ポンプのうちひとつが損傷していると言ったのは、つい3週間前の話である。燃料コアの撤去が必要となり、稼働は更に遅れる。


イランが公式に存在を認めている核施設は、ブシェールだけである。第2の核施設ブシェルⅡは、計画されたものの実際は棚上げ状態にある。民需用としてほかに19の原子炉建設が計画されている。次のはダルホビン(Darkhovin)だが、これはイラクのバスラから100キロもない。


ブシェールは、アラビアプレートの東端に位置する。このプレートは、移動性の強いユーラシアプレートとイランプレートとゆっくりとではあるが衝突しつつある。バリク鉱山の地質学者アラン・ジャックによると、移動中のプレートの端に近い地域は、地震活動が増す危険性にさらされている。


産業電気機械のコンサルタントであるボブ・ウィルモットがアラブニューズに語ったところによると、日本の原子力発電所地震に耐えられるように設計され、建設された。そして現実に地震に耐えたが、問題は津波のようであった。原子炉の冷却用ポンプを動かす電源部位に損傷を与えたのである。ウィルモットは、福島第一発電所は、世界最高の耐震建築であった、とけ加えた


ウィルモットの指摘にある冷却システムは、イランの場合どうなのであろうか。ブシェールにあるものは、1970年代に供給されたもので、3週間前にポンプ故障が生じた後、ロストムは2月28日付声明で、契約にもとづきこのポンプをプロジェクトにとりこんで使用することになっている、と述べた。


ロシアの企業は、支出を押さえるためドイツが供給した装置を一部使用ことに同意せざるを得なかった。そう語るのは、エネルギー研究で知られるロングアイランドのブルックヘブン国立研究所の核科学技術部のビル・ホラク部長。ロシア製原子炉に関する専門家である。


「この原子炉の安全はロシア連邦の監督にかかっている」と語るのは、カーネギー世界平和研究所のイランの核問題専門家マーク・ヒッブス。世界はロシアだけが頼りというわけである。この前のポンプ故障は問題を提起することになった、とヒッブスは指摘する。つまり、30年前の古い冷却システムを使って工事を進める決定に、疑問を呈しているのである。


サウジを基地とする或る建設会社の幹部は、匿名を条件に、ブシェールプラントの工事の質について高い評価をくだしていない、と述べた。「今回我々は、巨大地震が施設に及ぼす破壊力を知った。これは世界一建築基準が厳しく、それを厳格に守っている国で起きたのである。ブシェールがこれと同じ基準で建てられているか、疑問である。この施設の風下には住みたくない」とこの幹部はつけ加えた。


※1 2011年3月18日付Arab News(サウジアラビア)ロジャー・ハリソン及びマイケル・カズンズ記者による報道記事。

(引用終)