ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

大学と奨学金の問題

https://ironna.jp/article/11316


「高等教育の無償化」が救うのは学生でなく倒産危機の大学
『NEWSポストセブン』 週刊ポスト 2018年2月16・23日号
取材協力/峯亮佑(フリーライター


・安倍政権が打ち出した「高等教育無償化」は、“奨学金を借りる学生を減らす政策”に見える。だが、本当にそうか──。


・過当競争で私大の4割が定員割れを起こしているのに加えて、今年から18歳人口が急激に減少に向かい、奨学生が払う学費では大学経営が維持できなくなってくる。安倍政権の掲げる「大学無償化」からは、“奨学金でこれ以上、大学生を増やせないのなら、授業料を国が払って18歳全員が大学に行けるようにしよう。そうすれば大学は生き残れる”という発想が透けて見える。


日本学生支援機構のデータから加計グループ3大学の奨学金受給率を見ると、岡山理科大(50.7%)、倉敷芸術科学大(57.0%)、千葉科学大(51.7%)と奨学生によって経営を支えられていることがわかる。


・安倍政権の大学無償化の最大の問題は、大学の生き残りが優先され、「大学生に国が投資し、国に利益が還元されるか」という重要な視点が抜けていることだ。卒業生に借りた奨学金を返済するための「生活力」を持たせられない大学の授業料を無償化して学生を通わせても、国は税金投入に見合うリターンを得ることができるはずがない。


・大学無償化の本当の狙いは、奨学生が背負いきれなくなった私大経営の支援を、納税者に肩代わりさせることではないのか。

(部分引用終)

https://ironna.jp/article/11315


奨学金に絡む自己破産者は15000人以上 増加傾向にあり
『NEWSポストセブン』 女性セブン 2018年3月15日号


・東京の有名私立大学を卒業後、念願のアパレル業界に入社。しかし残業は毎月70時間を超え、給与は雀の涙。完全にブラック企業だった。人間関係にも悩み、わずか2年間で退職。以降、派遣やバイトなど非正規で働く日々を送っている。


「学生時代の奨学金です。合計300万円超。まだ半分も返済できていません。社会人になったら毎月2万円ずつ返す予定だったのですが、延滞し続けていて…。現在、アルバイトの給与が月に手取り11万円で、家賃が5万円。生活費の5万円を引くと、どうしても払うことができないんです」
奨学金を借りた日本学生支援機構(JASSO)からは催促の通知が絶えません。ただ、自己破産しても連帯保証人である親に支払い義務が行ってしまうので、それも申しわけなくて。もう、どうしたらいいのか…。完全に袋小路に追い詰められています」(A子さん)


・昨今、学生時代の奨学金の返済ができずに破産する人が激増している。


奨学金に絡む自己破産者は、2016年までの5年間で1万5338人。内訳は本人が8108人、保証人が計7230人。2016年度は過去最高の3451人が破産した。


・『ブラック奨学金』(文春新書)の著者でNPO法人POSSE』代表の今野晴貴氏が語る。「根本的な原因は学費の高騰です。国立大の授業料は2017年時点で年間約53万円。過去40年で15倍近く上がっている。私立はさらに高い。入学金も含め、4年間支払うのは家計に大きな負担がかかります。結果、奨学金に頼る学生が急増しました」


・現在、奨学金の受給者数は130万人にのぼり、20年前の46万人から3倍近く増加した。


「MARCH(明治、青学、立教、中央、法政)を出ても非正規労働者がゴロゴロしている時代です。正社員でも過重労働で超低賃金というブラック企業も多い。体調を崩して休職したり、辞めてしまったりすると、奨学金の返済は至難になります」(今野氏)

(部分引用終)

https://www.news-postseven.com/archives/20180214_649702.html


週刊ポスト』2018年2月16・23日号
国立有名大学の奨学金延滞率 トップは名大、ワーストは一橋
2018.02.14


・大学在籍時に奨学金を受けた学生が、その返済に苦しむケースが急増している。奨学金の受給率は入試難易度と一定の相関関係が読み取れ、難関大学ほど受給率が低い傾向がある。


日本学生支援機構の『学生生活調査』によると、大学生の「親の平均年収」は私立より国立が高く、学費は国立の方が安い


・「親の平均年収1000万円以上」とも言われる東大生の延滞率は0.4%。京大、北海道大、東北大、九州大なども同じ水準だ。


・東大より「返済力」が高いのが名古屋大(延滞率0.2%)だ。同地域の名古屋工業大学(0.5%)、愛知教育大学(0.3%)も低い。


・有名国立大のなかで「返済力」ワーストは、意外にも財界トップや大企業の経営者を輩出してきた一橋大(延滞率0.9%)だった。


・有名国立の延滞率ではなく、奨学金の「受給率」に焦点をあてて分析すると地域格差が浮かび上がった。東大(15.4%)東工大(16.8%)一橋大(16.7%)と東京にある大学は奨学生が少ないが、京大(21.7%)阪大(24.9%)北海道大(29.1%)東北大(34.8%)九州大(42.6%)と地方ほど受給率がハネ上がる。東京と地方の「大学生の親」の“所得格差”を反映していると推測できる。

(部分抜粋引用終)

https://ironna.jp/article/11317


「学歴」が分断する現代日本社会
『月刊Wedge』 2018/07/13
本多カツヒロ (ライター)
『日本の分断』吉川徹教授インタビュー


・「学歴なんか関係ない」といくら言ったところで、学歴により就くことのできる職業も違えば、賃金にも差があるのが現実。また、社会人になると同業者や同じような人生を歩んできた人々とのコミュニケーションが多くなり、それ以外の人々がどんな生活を送り、何を考えているかについては無関心になりがちだ。


・『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』(光文社新書)を上梓した計量社会学が専門で、大阪大学大学院人間科学研究科、吉川徹教授に日本における学歴の意味や、学歴分断社会の現状、そして非大卒の若者たちに忍び寄るリスクについて話を聞いた。


・―日本社会で学歴が持つ意味を一言で言い表すとどんな言葉になるでしょうか?


吉川:「自己責任だとみなされているがゆえに、もっとも重視されるアイデンティティ」でしょうか。今の日本社会では、「ジェンダー」「生年世代」「学歴」という3つの分断線が重要な意味をもちはじめています。


・「ジェンダー」や「生年月日」は外見から判断できてわかりやすい。しかし、学歴は外見上わからないものなのに、問いただすのはタブーだとされています。


―学歴分断と、巷で話題になる格差社会、階級社会という言葉に違いはあるのでしょうか?


吉川:学歴分断とは「最終学歴という、大人にとって変更不可能なアイデンティティ境界に従い、上か下かが決まる」ことを指します。


・学歴は、一度身につけて社会へ出れば、定年を迎えるまでそれをずっと使い続けなければなりません。だから、学歴分断は解消しえないのです。


トランプ大統領の誕生によってアメリカの分断が、Brexitによりイギリスの分断が叫ばれ、欧米諸国でもこの「分断」がキーワードになっていますが、そこでも学歴が重大な意味を持っているのでしょうか?


吉川:いいえ。欧米社会には、階級と民族という学歴より重大な格差の源泉があります。たとえば、企業の採用では、表向きは民族や階級といった個人情報によって差別をしてはならないとなっていますが、履歴書を見る人事担当者は名前で中国系か、ユダヤ系かなど出身民族を推測し、それならばこういう社会階級出身ではないかと想像しているのです。


しかし日本社会では、民族や階級の分断線が欧米ほどははっきりしていません。それゆえに、他社会では格差の決め手とみなされていない学歴が、大きな働きを果たしている。


―日本人は、高学歴化し、大学全入時代に突入するかと言われています。


吉川:昭和の日本社会の高学歴化を支えていたのは、親も教師も子どもになるべく高い学歴を望み、子どもも当然そう考えているという大衆的に高学歴を望む「大衆教育社会」だったと言われています。


・2009年に『学歴分断社会』を書いた当時は、「学歴分断」という言葉や概念自体がありませんでしたし、現実社会も大卒と非大卒の分断はまだ起きていなかったのです。


―半々の割合で、大卒と非大卒になる学歴分断状態が継続すると何が問題になってくるのでしょうか?


吉川:大卒と非大卒では、就いている職種や産業、昇進のチャンス、賃金などが異なります。そのため、ものの考え方や行動様式も異なってきます。さらに、恋愛や結婚においても学歴による同質性は高く、日本人の7割が同学歴の相手と結婚します。また、日本人の8割が親と同じ学歴をたどり子どももまた同じ学歴になるよう望んでいるということを加味すると、大卒家庭と非大卒家庭の分断は、やがて世代を超えて繰り返されるようになります。


・「住んでいる世界が違うから」という言葉を聞くことさえあります。これはまさしく深刻な分断状況だと言えないでしょうか。


―吉川先生が、特に問題を抱えているとみているのは、若年の非大卒層の人たちなのですね。


吉川:日本社会の現役世代は、ジェンダー、生年世代、学歴と3つの分断線でわけると、若年非大卒男性、若年非大卒女性、若年大卒男性、若年大卒女性、壮年非大卒男性、壮年非大卒女性、壮年大卒男性、壮年大卒女性の8つにわけられます。このうち特に不利な境遇にあるのが、若年の非大卒男性です。


・多くが義務教育もしくは高卒の両親のもとで育ち、かれらの多くは製造や物流を始めとした、わたしたちの日常生活に欠かせない仕事に就いて日本を支えているのですが、5人に1人が非正規・無職、一度でも離職経験のある割合は63.2%、3カ月以上の職探し、失業経験者は34%、3度以上の離職経験がある割合は24%と他の男性たちに比べ高くなっています。労働時間だけは長いのですが、同じく非大卒の壮年男性と比べると個人年収は150万円近く低い。彼らのことを本書ではレッグス(LEGs)と新しい言葉で表しました。「Lightly Educated Guys」の略で、高卒時に、お金と時間のかかる重い大卒学歴を選ばなかった、軽学歴の男たちという意味です。


・本来ならば、高卒ですぐに働き始めれば、大卒層よりも早く生活を安定させて、貯蓄もできて、早く結婚して家庭をもつこともできるはずです。しかし、雇用や収入の面で厳しく、消費や文化的な活動、余暇について総じて消極的になっていることがデータからわかりました。


―なんだかラストベルト周辺に住む白人ブルーカラーの人たちと重なるところがありますね。


吉川:少し前にアメリカでヒットした『ヒルビリー・エレジー』という本があります。その本が出るまで、都会に住むホワイトカラーの白人たちは、どうして都会へ出て仕事をしないのかなどと見ていたわけです。でも、彼らには彼らの論理がある。


―なぜ、レッグスだけが他の層と切り離されているのでしょうか?


吉川:彼ら自身は、日々の生活に追われるばかりで、積極的に自分たちの立場を主張しません。他の層の人たちも、レッグスが世代を超え繰り返されることに気がついてない。


―彼らに対し、公的なケアがなされず、リスクを負わせている現状をどのように変えていけば良いと考えていますか?


吉川:再三、繰り返している通り、日本では学歴が重要な決定要因になっているにもかかわらず、大学無償化の議論を除けば、学歴をベースにした政策はありません。


・大卒層について、大学無償化や私的負担の軽減を議論するのであれば、同じ世代のレッグスに対しての支援も議論すべきです。


―多くの人が、大人になるにつれ、同じようなライフコースを歩んできた人としかコミュニケーションを取らなくなります。


吉川:『日本の分断』では、8つの分類を8人のプレイヤーで構成されたサッカーチームのようなものだと考えています。大卒のフォワードだけがいくら得点し活躍しても、ディフェンスであるレッグスが機能しなければチームは勝てません。それくらい日本社会はギリギリの状態なのです。


ほんだ・かつひろ ライター。1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中

(部分抜粋引用終)

読んでいて気が重くなるような記事だ。
(1)学費の高騰が原因のような記述があるが、新制一期の名大生だった私の亡父の時代に比べれば、私の学生時代には、国公立でも桁違いの学費だった。つまり、世の中の経済とは、そういうものだと弁えていなければならない。
(2)一橋大の延滞率が高いのは、経済中心の大学だったのに、昔の元学長がマルキスト都留重人氏だった学風とも関係していないだろうか(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20131121)。つまり、世の中を斜に構えて生意気なユートピア思想に若いうちから慣れてしまい、甘い人生観でも何とかなるさと、誤解してしまったケースである。
(3)全人口が首都圏に住むことは不可能なのだから、地方と差異を強調するのもおかしい。地方の方が、生活費が低く済む場合も多いのだ。
(4)子供は親と同じ学歴を求めるというのならば、親が博士号取得の場合、子供も長々と大学に居続けて博士号まで頑張るのだろうか?

そもそも、十代の段階で、奨学金という借金を当てにして大学進学を志すという進路設計が、解せない(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20150405)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151111)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20170828)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20180708)。親は何をしていたのだろうか。大学に行かせたいのならば、誕生直後から教育資金を計画的に貯めて備えるという人生設計はなかったのだろうか。
それに、私の学生時代でも新聞奨学生制度があり、住み込みで新聞配達をして働きながら(つまり、食住は確保されていた)、夜間大学(二部)に通うとか、まずは高卒後に公務員になって働きつつ、職場の理解を得て短大から始め、優秀な成績で四年制の3年生に進学した、というケースを時々見聞していた(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20151228)。
あしなが奨学金は(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20071027)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20080130)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20090724)、親の病死や事故死や自死等で大変な思いをしている高校生を引き取って、寮生活を通して礼儀作法や仲間づくりを指導されつつ、頑張って大学に通い、一人前として社会に出るまでの制度を用意している。事業が拡大し、今ではアフリカ等の若者との交流コースまでできているようである。
そういう事例を知り、(恵まれているならばもっと頑張らなければ申し訳ない)と、私は自分を叱咤していたものである。
平成になってから、よろず平板になり、甘ったれ人間が増えた。その結果、国力が下がり、経済格差が拡大し、近隣諸国に土地や人口を侵略されつつある気弱な日本が出現した。